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Saturday, January 30, 2021

「FINAL FANTASY VII REMAKE」が生まれた経緯やゲームデザインなどが語られた「CEDEC+KYUSHU 2020 ONLINE」の基調講演をレポート - 4Gamer.net

asikjost.blogspot.com  2020年1月30日,ゲーム開発者向けオンラインカンファレス「CEDEC+KYUSHU 2020 ONLINE」の基調講演「FINAL FANTASY VII REMAKE 解体真書」が行われた。この講演では,PS4向けRPG「FINAL FANTASY VII REMAKE」のプロデューサーを務めたスクウェア・エニックスの北瀬佳範氏と共同ディレクターの浜口直樹氏が,同作の開発を決断した理由やリメイクにあたり重視したポイント,開発で得られた知見などをトーク形式で紹介した。
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左から,モデレーターを務めたレベルファイブ 代表取締役社長 / CEO 日野晃博氏,北瀬佳範氏,浜口直樹氏
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「FINAL FANTASY VII REMAKE」は2020年4月に発売され,同年8月には全世界累計販売本数が500万本を突破するなど,大ヒット作品となった(関連記事
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 トークの最初のテーマは,「FINAL FANTASY VII REMAKE」が企画された経緯について。北瀬氏によると,オリジナル版「FINAL FANTASY VII」のディレクターだった自身と,キャラクターデザインを手がけた野村哲也氏,プロデューサーだった橋本真司氏ら3人で常々リメイクをやりたいと話していたという。とくに橋本氏は,映像コンテンツ「ファイナルファンタジーVII アドベントチルドレン」に採用されたような,リアルなキャラクターでリメイクしたいという思いを抱いていたとのこと。しかしそのクオリティで現代的なゲームとしてリメイクするとなると相当の覚悟が必要で,なかなか1歩踏み出すのが難しいというのが現実だったそうだ。

 ちなみにオリジナル版のフィールド上のデフォルメキャラクターは400ポリゴンで構成されていたとのこと。当時の北瀬氏はうまくデフォルメできたと感動したそうだが,さすが現代では通用しない。そういった意味でも,どこかのタイミングでリメイクして後世に残そうと考えていたという。

 またドラマチックなサブタイトルではなく,「REMAKE」というシンプルかつストレートな言葉を採用した理由は,最初のPVを観た人が「ゲームではなく映画じゃないか」と思われることを想定したからだとか。そこで映像の最後に「REMAKE」と入ったロゴを表示することで,「これはゲームだ」ということをアピールすることに野村氏がこだわったとのこと。

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 浜口氏によると,本作のバトルがアクション寄りになったのは,舞台となるミッドガルをリアルに体験させたかったからだという。例えば,敵にエンカウントすると別の空間に飛ばされ,コマンドで行動を選ぶとなると,没入感が途切れてしまうというわけである。没入感を継続させるためにはインタラクション性を上げる必要があり,必然的にアクション寄りになっていったそうだ。
 なお本作には,バトルをコマンドで進める「クラシックモード」も存在するが,北瀬氏によるとこれは主にオリジナル版のファンに向けて,企画当初から考慮されていたものだという。
 また浜口氏も「アクションRPGのバトルと言うよりも,オリジナル版のATB(アクティブタイムバトル)を現代向けに進化させたらどうなるのかということをチームに問いかけていた」と話していた。

 2つめのテーマは,「FINAL FANTASY VII REMAKE」の開発のように大きなプロジェクトを運営するノウハウについて。
 北瀬氏は,ゲームのクオリティを担保するのはプログラマーであるとし,そのポジションには信頼の置ける人材を起用すると持論を語った。
 またプロジェクトのトップ1人だけが大きな権限を持っていると,1つ道を誤ったときに取り返しのつかないことになる恐れがあるので,意見できるポジションを用意するとのこと。例えば共同ディレクターである浜口氏は,ディレクターである野村氏に対して対等に意見できるし,浜口氏に意見するスタッフもいる。北瀬氏は,「自分が迷っているときに,雑談レベルで『こうしたほうがいい』と言われると安心することもある」とし,「各自のレイヤーの中で,そういったことをやっていてほしい」と話していた。

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 「FINAL FANTASY VII REMAKE」は100人以上もの規模になる内製プロジェクトで,チームのマネジメントは浜口氏が仕切っていたという。チーム内の各セクションの人事は,マネジメントに特化している人材をリーダーに据え,クリエイティブに特化している人材をフォローするケースが多いそうで,浜口氏は「クリエイティブに優れ,マネジメントもできるという人材がベストだが,そんな人材はなかなかいない」と語った。
 またクリエイティブに特化し周囲から一目置かれる,言わばカリスマ性のある人材もいるという。浜口氏は「マネジメントがうまい人達がそろっていても,独創性の高いものが作れるわけではない。うまいことバランスを取らなければならない」と見解を示した。

 3つめのテーマは,ゲームデザインについて。浜口氏は本作に共同ディレクターとして関わることになったとき,オリジナル版の開発者である北瀬氏と野村氏に「どういうゲームにしたいのか」を改めて確認したとのこと。北瀬氏からは「『アドベントチルドレン』のようなビジュアルのゲーム」,野村氏からは「ストーリーメインのゲーム」をそれぞれ求められたそうで,それであればオープンワールドではなく,「God of War」シリーズや「The Last of Us」シリーズのようなストーリードリブンのゲームを突き詰めることに決めたという。

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 オリジナル版が名作であることに疑いの余地はないが,20年以上前のタイトルであることも事実。そのすべてを忠実に再現すると,現代では逆に違和感が出てくるので変更せざるを得ない部分もある。その部分にどこまで踏み込むのか,かなりのやり取りがあったとのこと。浜口氏は,チーム内にオリジナル版のファンが多くいたので,理解が早くやりやすかったと話していた。
 なお北瀬氏によると,本作の発表をした2015年以降,「FINAL FANTASY VII」のプロジェクトに関わりたいという人材が世界中から続々と応募してきたそうだ。

 4つめのテーマは,本作のディレクターである野村氏とのやり取りについて。北瀬氏は企画の初期段階でストーリー重視であることやビジュアル面といったグランドデザインを決めたあとは,浜口氏を信頼して任せていたという。
 また浜口氏は,すべてを確認しているとやり取りが膨大になるので,野村氏がこだわる部分を重点的に確認を取っていたとのこと。とくにキャラクターの設定や世界観などから外れた言動がないように,注意を払っていたそうだ。北瀬氏によると,野村氏はボイス収録にもすべて立ち会うほど,キャラクターのすべてにこだわっていたのだとか。

 5つめのテーマは,本作が分作となったことについて。北瀬氏によると分作はほぼ最初の段階で決まっていたとのことで,往年のファンやゲーマーに現代のゲームとして認めてもらえる密度を出しつつ,1本のゲームとして十分なボリュームも担保できると確信できたので,ミッドガルで一区切り付けることに決めたという。
 またオリジナル版で省略していた部分に関しては,浜口氏が「例えば夜がすごく長く続いていた部分は,1拍入れる。1拍入れたぶん,何か展開がないと話がおかしくなる。そのつじつま合わせが結構大変だった」とする一方,「ストーリーが同じでも,当時表現されていなかった部分が出てきて『こんなことになっていたのか』となる。懐かしさの中に,新しい発見を持たせることが,リメイクのやるべきこと」と語った。

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 6つめのテーマは,「FINAL FANTASY VII REMAKE」の2作めについて。浜口氏によると,次はミッドガルの外の世界,つまり「FINAL FANTASY VII」の世界がどういうものなのかを,プレイヤーに体験させるものになるという。
 また北瀬氏は,「オリジナル版を知っているからこそ,次の拠点はどうなるんだろうといった思いが皆さんにあるはず。1作めで僕らがどういうものを作ろうとしているのかある程度理解していただけたと捉えているので,その期待に応えることと,良い意味で裏切ることをやっていきたい」と語った。

 なお浜口氏によると,2作めを開発するための求人に応じる人材の中には,「1作めをプレイして,続編を作ってみたい」「新しいアクションを感じたので,自分もやってみたい」という人が増えているとのことで,「そういう人材と一緒に新しい驚きを届けたい」と話していた。

 7つめのテーマは,FFシリーズにおいて事実上の前作になる「FINAL FANTASY XV」から,「FINAL FANTASY VII REMAKE」が学んだことについて。浜口氏によると,あまり意識することはなかったという。例えば「FINAL FANTASY XV」はオープンワールド,「FINAL FANTASY VII REMAKE」は世界は狭いが密度は高いゲームと対極にあるが,それは今振り返ったからこそ言えることで,開発中はミッドガルを再現することに集中していたそうだ。

 8つめのテーマは,プロデューサーや共同ディレクターとして重要なことについて。北瀬氏は,プロデューサーとして重要な3点を紹介。
 1つは内製プロジェクトの場合で,とにかくスケジュールが重要だという。スケジュールが1か月延びただけで莫大な追加予算が必要となるため,マネジメントや品質管理も必然的にしっかりやる必要があるとのこと。

 2つめは外部への情報発信で,どんなに良いゲームができたとしても,メッセージがうまく伝わるとは限らないという。そこで,例えば「FINAL FANTASY VII REMAKE」はバトルがアクションになるという情報が流れたときに,往年のファンが「プレイに付いていけないのでは」ザワついたが,そこに「クラシックモードがあるので大丈夫」というメッセージを投下したり,「このビジュアルのクラウドが操作できる」といった本来実現したいテーマを繰り返し伝えたりすることが重要というわけである。

 3つめはクリエイターとして,きちんとマネジメントすることと,自由な発想を持つことの両立だ。それを実現するための環境作りや,スタッフの説得などをきちんとできないと「FINAL FANTASY」シリーズの尖った部分は作り出せないと北瀬氏は語った。

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 浜口氏は,共同プロデューサーとして重要な2点を紹介。1つめは「ブレないこと」で,「チームとしてこれを目指す」と決めたら,人の意見に左右されず覚悟を持って決定に沿ってプロジェクトを進めることが重要だという。そのためには,ゲーム以外のエンターテイメントを体験して,さまざまな知識やボキャブラリーを増やすことにも努めているそうだ。

 2つめは,一度決めたのに途中で「実はこっちのほうがいいのでは」と気づいたとき,例えばAと決めたのにBのほうが良いとなったときは,自分の中で「BはAの範疇,もしくは延長線上にある」と理屈が通っているかを考えたうえでBに変更すること。ただし180度の変更はしないという。

 9つめのテーマは,「FINAL FANTASY」シリーズの開発以外でやってみたいことについて。北瀬氏は,自身が直接ゲーム開発の現場にいないということもあり,「社内に,チャレンジした新しいIPが出てきてほしい」とし,実際いくつかプロジェクトが動いていることを明かした。

 浜口氏は,「FINAL FANTASY」シリーズを作り続けたいとしつつ,いつか機会があればチームラボが制作するようなリアルのエンターテイメントコンテンツにチャレンジしたいと語った。ただ当面は,「FINAL FANTASY VII REMAKE」に専念するとのこと。

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 トークの最後には,北瀬氏が聴講しているゲーム開発者に向けて,「ゲーム開発には,その人に尖っている部分が1つでもあれば,そこを拾い上げてチームに組み込み活かしていくという特徴がある。自分に何かしら才能があると思ったらチャレンジできる世界」とコメント。
 そして浜口氏が「コロナ禍で皆大変だが,ゲーム開発はそんな中でも人々にエンターテイメントという形で希望を届けられる仕事。人々に希望を与えるべく,皆さんと一緒にゲーム業界を盛り上げていきたい」と語って,トークをまとめた。

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