ビッグモーターの「黙殺戦略」も、終わりを告げようとしている(編集部撮影)
自動車保険の保険金不正請求問題に揺れる中古車販売大手・ビッグモーター。これまでどんな不祥事や疑惑にも「会見せず」「対応せず」「取材に答えず」の姿勢を貫いてきた同社だが、7月18日についに謝罪のプレスリリースを発表。同日には斉藤国交大臣が聞き取り調査を行う方針であることを明かすなど、「黙殺戦略」も、終わりを告げようとしている。
プレスリリースや企業の声明から、言葉の奥に隠された本音をひもとき、潜む矛盾や不都合を指摘する──。気鋭のPR戦略コンサルタント・下矢一良氏による連載第5回。
終焉を迎えつつある「完全黙殺」戦略
メディアに不祥事を指摘されても、SNSで炎上しても、一切反応しない「完全黙殺」を貫いてきたビッグモーター。この類稀なる「広報戦略」が機能してきたのには、3つの理由があった。
ひとつは「ビッグモーターが非上場であること」。株主総会や決算会見など、経営者が否応なく矢面に立たなくてはならない場面がないからだ。
もうひとつは「メディアが事実の裏取りをしようとしなかったから」。事実確認の取材はかなりの手間と費用がかかる。不祥事の当事者を探し出し、その加害者の証言が正しいことを裏付けるために、さらに複数の証言を得なくてはならない。場合によっては物証も必要だろう。訴訟リスクすら法務部門と検証しなくてはならない。
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