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Sunday, November 13, 2022

補助金基準口約束のみ/農薬散布面積水増し - 読売新聞オンライン

■「不正とは違う」

 「補助金の水増しはあったが、私腹を肥やしたわけではない。返還は求めないし、職員も処分しない」

 舟橋村役場で10月13日、新たに浮上した農業関連事業での不正について古越邦男村長(当時)は、こうした説明を繰り返した。

 問題となったのは、ドローンで農薬を散布する団体に村が補助金を支給する事業だ。当時の金森勝雄村長の肝いり事業として2019年度に始まり、「スマート農業」で高齢化した農家の負担を減らす狙いがあった。支給の基準は10アールあたり2000円だった。

 この補助を受けることになった村内の農事組合法人は、村に「現場でドローンを充電できる発電機があれば作業がはかどる」と要望。そこで、職員は散布面積を水増し、約9万円を上積みして計約69万円を支給した。

 職員は村農協での勤務を経て採用され、農事組合法人とは以前からつながりがあった。“日本一小さな自治体”は村内の企業団体と密接な関係を持つことにもなる。古越氏は職員の不正について「農家のためを思ってしたこと。明らかな不正とは違う」と話している。

■県警捜査で浮上

 この補助金不正は2021年夏頃、県警による捜査で浮上していた。

 行政の補助金制度は、基準を明文化した「要綱」が欠かせない。だが、その要綱は存在せず、「10アールあたり2000円」が業者との口約束になっていた。県警は立件を見送ったが、村は同年秋にようやく要綱を作成。19~21年度は要綱なしのまま計291万円が支出されていたことになる。

 田中勝・生活環境課長は「捜査がなければ、要綱は今もなかった。内輪で裁決を受ければ事業が進むので重要性を感じなかった」と振り返る。補助金の水増しは「ルールが存在しないから、ルール違反にも気付かない」(村幹部)という状況で起きていた。

■「県が関わるべき」

 村では昨年、土建業者に発注工事の入札予定価格を漏らしたとして元生活環境課長が官製談合防止法違反で起訴され、有罪判決を受けている。

 だが、村内にはこの土建業者しか存在せず、長く入札ではなく随意契約で工事を発注していた。談合の前の入札で工事を落札できなかった土建業者は金森村長に不満を伝えており、裁判で元課長は「金森村長から『(業者と)和解しろ』と 叱責しっせき され、謝りに行った」と証言している。

 こうした状況について、三重県財政課長などを務めた田村秀・長野県立大教授は「税金を使う以上、自治体規模の大小にかかわらず契約はきっちりやらないといけない。私腹を肥やしていなくても手続きに問題があれば不正だ」とし、「住民が望むなら周辺市町と合併して行政水準を上げることもできるが、まずは県が主導して関わるべきではないか」と指摘している。(川尻岳宏)

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