2020年代半ばから約10年の国土づくりの指針となる国土計画の検討が始まりました。国土計画はおおむね10年ごとにつくっており、今回が戦後8度目になります。人口減少が加速し、必要とされない土地が増えていく中で、国土が荒れるのを防ぐには、人々の住み方や土地の使い方をどうすべきかが大きなテーマです。
国土交通省の国土審議会が議論し、22年夏に中間報告を出すことになっています。これに先だって「国土の長期展望」と「国土管理」に関する2つの専門委員会が議論の下地になる報告をまとめました。
それによると、人が住む地域は15年時点で国土の半分ですが、50年にはこのうち2割弱に人が住まなくなり、3割は人口が半分以下に減ります。
人が住まなくなれば農地や山林が荒れ、風水害の被害を大きくし、国土の防衛にも支障を来すようになります。一方で人の目が行き届くよう分散して住んでいると、暮らしに必要な行政サービスやインフラを維持する費用がかさみます。
このバランスを取るには、どんな住み方がよいのか探るのが国土計画の大きな役割です。
通学や通勤、それに通院や買い物などで移動する範囲を生活圏と呼びます。総合病院や大型商業施設などが成り立っていくには生活圏として人口30万人が必要だとされています。
これまでの国土計画はこの30万人をひとまとまりの生活圏に考えてきました。一通りの都市機能がそろい、人々の暮らしが地域内で完結する定住圏という構想です。これによると全国は300ほどの生活圏で構成されることになります。江戸時代の藩に近いイメージです。
今回はこの生活圏の姿を変えようとしています。デジタル社会になり、オンライン診療やネット販売、それに行政手続きのオンライン化が進めば、生活圏内にすべての都市機能がそろわなくても暮らしていけるようになる可能性があるためです。
そこで長期展望では10万人いれば生活圏として成り立つのではないかと考えました。生活圏が30万人から10万人になると、人々はそれだけ分散して暮らせるようになります。
分散して暮らせば、人の目が届く地域が広がります。生活圏の中心部から1時間で行ける範囲を比べたところ、30万人圏から行ける範囲は国土の38%にとどまりましたが、10万人圏なら国土の70%までカバーできると国交省は試算しています。
国土計画に詳しい日本開発構想研究所の戸沼幸市顧問は「10万人都市の考え方は一つの問題提起になる」とみます。具体化はこれからですが、デジタル化によって人口減少下でも、より多様な地域が残る可能性があるのは確かでしょう。
からの記事と詳細 ( 新しい国土計画、検討始まる 「生活圏」基準は10万人|NIKKEI STYLE - 日本経済新聞 )
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