プラスチックフィルムなどの表面にも絶縁膜を形成
物質・材料研究機構(NIMS)は2021年5月、低温焼結塗布型シリカ(LCSS)をゲート絶縁層に用い、全ての層を印刷プロセスで製造したTFT素子を開発した。このTFT素子は、1V以下の動作電圧で、移動度は最大70cm2V-1s-1と世界最高レベルを達成したという。
印刷プロセスで電子回路を形成するプリンテッドエレクトロニクスは、次世代の半導体製造技術として期待されている。ただ現状だと、印刷プロセスで製造したTFT素子は動作速度が遅く、動作電圧が高い、といった課題がある。また、印刷のみで素子間を接続して電子回路を形成する3次元配線技術なども、本格実用化に向けて解決すべきテーマとなっていた。
研究チームは今回、プリンテッドエレクトロニクス向け層間絶縁材料としてLCSSを開発した。LCSSは塗布プロセスによる成膜が可能で、焼結温度は90℃と低い。このため、ガラス基板やシリコンウエハーはもとより、プラスチックフィルムやセルロースナノペーパーなどの表面にも絶縁層を形成することができるという。
実験では、NIMSが開発している微細印刷技術を活用し、LCSSをゲート絶縁層に用いて線幅15μmの印刷配線を4層形成した。ソース・ドレイン、ゲート電極には金属ナノインクを、半導体層には高純度半導体単層カーボンナノチューブ(sc-SWCNT)を用いて、それぞれ印刷した。層間はビアホールで電気的に接続し、1MHzまでの信号であればロスなく伝達が可能なことを確認している。
研究チームは、試作した全印刷TFT素子が1Vの動作電圧で、最大70cm2V-1s-1の移動度を実現できた要因について、「絶縁性能に影響しない、微量の不純物がLCSS内部に存在し、電荷の蓄積能力を高めているため」と分析している。
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