首相在任中の「桜を見る会」に絡む問題が再燃し、表舞台から姿をくらましていた安倍晋三前首相が、再々始動のエンジンを吹かせ始めた。議員連盟、会合へ次々と参加し、ライフワークの憲法改正や原発推進など自身の思想信条を強くアピール。決して順調とは言えない菅義偉首相の政権運営を横目にじわり、存在感を高めており、その意図をいぶかる党内から警戒も呼んでいる。(河合仁志)
4月22日、自身を指導者と仰ぐ自民党のグループ「保守団結の会」が国会内で開いた会合に講師として登壇した安倍氏は、国家観を前面に打ち出して若手議員を鼓舞した。「日本を日本たらしめているものは何か-。常に思いをはせながら、気概を持って取り組んでいただきたい」
その2時間半後。今度は、民間の改憲派によるシンポジウムの舞台にパネリスト・安倍氏の姿はあった。持病の再発により、自らの手で憲政史上最長政権に幕を引いて約8カ月。「新しい薬が大変よく効いて、あと2回くらい点滴すれば一応治療も終わる」と体調が戻ってきたことを報告し、「肩の荷を下ろさせてもらった。今、その荷は全部菅さんの上に載っかっている」。気心の知れた支援者に囲まれリラックスしたのか、軽妙なトークで会場の笑いを誘い、沸かせた。
宰相の座を去ってしばらく静養に努め、いったん活動を再開していた昨年末。「桜を見る会」前日の夕食会費
その後、今年3月末、「桜」問題の政治資金規正法違反容疑について「嫌疑不十分」や「嫌疑なし」で不起訴処分に。このころから、公の場に顔を見せるようになった。「『みそぎは済んだ』と思っているのだろう」と党関係者。安倍氏は、党憲法改正推進本部の最高顧問をはじめ、原発の新増設や建て替えを主張する議員連盟の顧問などに立て続けに就任。出身派閥の細田派からは「強い安倍さんが帰ってきた」(衆院若手)と歓呼の声が上がっている。
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安倍氏の路線を継承すると宣言した菅政権は、新型コロナウイルス対応で精彩を欠き、初の国政選挙となった25日の衆参3選挙では不戦敗も含め3敗の憂き目を見た。秋までに衆院解散・総選挙を控え、党内には「選挙の顔」としての首相のリーダーシップに物足りなさを隠せない不穏な空気も生まれつつある。
そこに来ての、“選挙不敗の総裁”だった安倍氏の復権-。細田派の閣僚経験者は「万全な体調と本人の意思さえあれば、いつでも『(首相)再々登板』への片棒を担いでみせるよ」。まずは安倍氏の早期の派閥復帰と会長就任をその導火線に、と執念を燃やす。
当の安倍氏は、盟友の麻生太郎副総理兼財務相をしばしば東京・富ケ谷の私邸に招き、互いの政局観を披歴しすり合わせ、「安倍派」発足の時機を慎重にうかがっているという。現時点では「菅政権を支えていく」(安倍氏)ことで一致する2人。次期衆院選で地盤の弱い若手の応援に飛び回り、「恩を売る」ことで党内無比の求心力を築き上げる青写真を描く。
一方、首相の後見役として権勢を振るう二階俊博幹事長率いる二階派にとって、こうした安倍氏の動きは目の上のたんこぶ以外の何物でもない。あるベテランは「もう過去の人。おとなしくしてもらった方が何かとやりやすいのだが…」。細心の用心、けん制と抑止、そして白眼視が満ちる。
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