黒部川電源開発を背景に県内最大規模の温泉地、宇奈月温泉(黒部市)が開湯したのは一九二三(大正十二)年十一月。この月、同温泉にとって重要な出来事が二つあった。
一つは現在の温泉街から約七キロ、渓谷上流方向にある黒薙温泉から松材をくりぬいたパイプで湯を引くことに成功したこと。もう一つは黒部鉄道(現富山地方鉄道)下立駅−桃原(ももはら)駅(現宇奈月温泉駅)間約七キロの開業だ。
桃原は宇奈月温泉一帯の台地の古称。桃原駅開業当時、駅の背後にはすぐに山が見える。店や旅館もほとんど見られない。しかし、温泉資源確保と旅客運送の条件が整ってから、温泉街は急速に発展していく。
桃原駅は翌二四年三月に早くも宇奈月駅と改称され、七一年八月に現在の名称となった。七三年には出口近くに温泉噴水が設置され、湯を楽しみに来た観光客を迎えるようになった。五代目となる現駅舎は八二年八月に完成した。
宇奈月温泉の歴史、文化に詳しい宇奈月温泉自治振興会長の河田稔さん(77)は「宇奈月温泉が温泉地として発展するためには湯を引いただけでは足りない。駅は不可欠。いわば始まりの駅だ」と話した。 (松本芳孝)
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