数年に渡ってその兆候が表れていたが、Googleは1月、Chromeブラウザの1%に対してサードパーティCookieをついに無効化し始めた。同社はサードパーティCookieについて年内に消えると主張しているが、その約束を果たすかどうかは不明である。
マーケティング担当者は、データ不足を補うためにファーストパーティデータの収集を優先し、リテールメディアの台頭のなかでその活用に進めていくことになる。
代替案をテストし、ファーストパーティデータに大きく舵を切る一方で、マーケターはGoogleのCookie廃止の動きについては無関心であることが多い。ただ、米DIGIDAYの調査によると、サードパーティCookieの終了に向けて準備をしているブランドの数は、2021年第1四半期の56%から2023年第2四半期には72%と急増しているという結果もある。
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ファーストパーティデータを売り物に
「個人情報保護法やAIに関連するあらゆる事象から、我々はブランドがウォールドガーデンと呼ばれるエコシステムで運営されるようになると考えている。Googleとメタ(Meta)の独占を打破し、ファーストパーティデータを用いて自らのエコシステム内でコントールを取り戻すだろう」とマーケティングエージェンシーであるモーニングウォーク(Morning Walk)のパートナー兼CEO、パット・ゴギン氏は語り、「現時点では、データはクライアントが所有できるもっとも価値のある資産のひとつであり、一部のマーケターはここから収益を得ようとしている」と付け加えた。
ウォルマート(Walmart)、ターゲット(Target)、そして最近ではコンビニエンスストアのワワ(Wawa)のような小売業者間のリテールメディア競争には拍車がかかっている。イーマーケター(eMarketer)によると、2024年のリテールメディアは全世界のデジタル広告費の5分の1を占めると予想されている。
たとえば、モーニングウォークは現在、除雪・防氷会社のボススノープロー(Boss Snowplow)とデジタルデータ変革に取り組んでいる。顧客インサイトを自社のエコシステムだけでなく、そのデータに関心のあるブランドや広告主に販売する可能性について、エージェンシーと協議を開始した。もっとも、モーニングウォークの代表によれば、ボススノープローとは正式な契約には至っていないという。
データ共有に関する会話が増えるにつれ、ブランドとエージェンシーはコンプライアンスに留意する必要がある。モーニングウォークは、クリーンルームに関してもクライアントと初期段階から協議を進めている。つまり、ブランドやほかのデータパートナーが持つファーストパーティデータの共有方法について模索し、共同利用を行ないながらプライバシーを遵守する方法について検討しているのだ。ただ、同社によれば、状況は注視しているものの現時点では何か進展があるわけでないとのことだ。
データの取得がもっとも重要になる
一方、ほかのブランドは差し迫ったシグナルロスを補うのに十分なデータベースを構築するため、できる限り多くのデータを集めようとしている。
ジョシュ・セラーズ(Josh Cellars)のワインを所有するドイチュ・ファミリー・ワイン&スピリッツ(Deutsch Family Wine & Spirits)のチーフブランドオフィサー、ダン・クラインマン氏は、GoogleのサードパーティCookieに関する質問に対し、「ファーストパーティのデータ収集を爆発的に増やそうとしている」と答えた。現在、同社は消費者の分析と理解に数百万規模の投資していると付け加えたが、具体的な金額は明らかにしなかった。
このワインブランドはメーリングリストを活用し、ブランド主導でファーストパーティデータを収集し、メタ上でキャンペーンを展開している。クラインマン氏によれば、サードパーティCookieが終了するにつれ、よりよいターゲティングのために、ファーストパーティデータとサードパーティデータを結びつける動きがあるという。
「最終的には、ファーストパーティデータ、サードパーティデータ、プラットフォーム間のインタレスト/デモグラフィック・ターゲティング、およびメディア・ターゲティングのための類似オーディエンスなど複数データの組み合わせを行う予定だ」と、クラインマン氏はメールで回答した。
意図的に閉じられたエコシステム
オンラインでベビーレジストリサービスを提供するベビーリスト(Babylist)は、2022年に独自のコンテンツチームであるザ・プッシュ(The Push)を立ち上げ、最近ではメディアとリテールビジネスを拡大。ベビーリストのWebサイト上では、エンデミック広告および非エンデミックの広告主に対して、eメールやTikTok動画などのコンテンツ、およびWeb上の有償広告枠を提供している。
同社のチーフグロースオフィサーであるリー・アン・グラント氏は、「2023年の同社のメディア売上は前年比で約50%成長し、2024年の売上予測値を上回っている」と述べた。具体的な金額は明らかにしていないものの、注目すべきは、この成長は広告主が代替パフォーマンスチャネルを探している時期にもたらされたことだ。
これは、ベビーリストの成長によるところもある。さらに、「広告主が特定のオーディエンスをターゲットにするなら、目的のターゲット層を持つプラットフォームに直接アプローチする必要があると気づいたことにもよる」と、グラント氏は述べる。ほかの小売企業が、より多くの広告費を獲得するために顧客インサイトを拡大し広告収益を増やそうとするのに対し、ベビーリストはそうではないようだ。
これについてグラント氏は、「意図的に閉じられたエコシステム」と呼ぶ。広告主へ働きかけるよりも、データを内部で活用して、興味を持つブランドや広告主に自らのエコシステムの価値を証明することに重点を置いているからだ。
ウォールドガーデン vs リテールメディア
エージェンシー幹部のあいだでは、リテールメディアの成長によって市場がますます細分化されたという不満が高まっている。そこでは、複数のリテールメディアネットワークにまたがってクライアントの広告費を分配し、KPIを追跡することが求められる。
デジタル広告市場におけるGoogleとメタの優位性について、「個人情報に配慮したウォールドガーデンによって、広告主が顧客データを容易に活用できるようになった」とゴギン氏は話す。現在、エージェンシー幹部はその投資を再考する必要に迫られているようだ。
「いま起きていることは、感情的なつながりと信頼を築くためにブランドに投資する必要があるということ。そして、コンバージョンを促進するパフォーマンスに投資の必要がある」とゴギン氏は述べ、「これまで広告全体の60~70%を実質的に支配していた大手2社のエコシステムを使うのではなく、我々自身のエコシステムのなかで多くが投資されることになるだろう」と言い添えた。
GoogleのCookie廃止スケジュールはここ数年絶えず変更されているが、エージェンシーとそのブランドクライアントはそのあいだに独自のデータセットを構築し、ギャップを埋めるためにアドテクパートナーと協力してきた。
「Googleはこの件で非常に大きな打撃を受けるだろう。これまでのところ、新たなテックソリューションによってGoogleのサードパーティCookie廃止の影響はない。ただし、これはまだ始まったばかりなのだ」と、モーニングウォークのアナリティクス・CRM担当バイスプレジデントであるスティーブン・ウォブルウスキー氏は話している。
Kimeko McCoy(翻訳:SI Japan、編集:島田涼平)
からの記事と詳細 ( Cookie レスが始まり、マーケターを支えるのはファーストパーティデータの役目に - DIGIDAY[日本版] )
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