質問に対して人工知能が自然な文章で回答する「チャットGPT」。
文章を瞬時に作成できるため学習への悪影響を懸念する声もある中、永岡文科相が会見で「学校現場が主体的な判断をする際に参考となる資料を、できるだけ速やかに取りまとめたいと考えている」と、チャットGPTに対する見解を示したほか、上智大学や東北大学などの国内の大学が、学生の使用についての指針などを発表している。
この記事の画像(8枚)そして東京大学も、4月3日に学内向けサイトで副学長名義で発表。チャットGPTを含む「生成系AI」とどう付き合うべきかについて学生と教職員に向けて呼びかけた。
生成系AIのみでのレポート作成はできない
公開された文章のタイトルは「生成系AI(ChatGPT, BingAI, Bard, Midjourney, Stable Diffusion等)について」。
内容は、まずチャットGPTをはじめとした生成系AIがどのような仕組みなのかを紹介した上で、利用する際の注意点や社会に対する影響を紹介。具体的には、チャットGPTは「『検索』ではなく『相談』するシステム」であり、またチャットGPTに送った質問の文章はシステムに蓄積されて学習される可能性があることから、情報漏洩や著作権侵害の危険性もあるという。
またこの中で、学位やレポートにおいての利用にも言及。「学生本人が作成することを前提としておりますので、生成系AIのみを用いてこれらを作成することはできません」とし、教員には「教員はレポートや提出論文の審査に関しては、十分そのことを認識した上で評価を行う必要があります」と呼びかけた。
そして最後に、利用禁止するだけでは問題解決しないとして、「どのようにしたら問題を生じないようにできるのか、その方向性を見出すべく行動することが重要」「積極的に良い利用法や新技術、新しい法制度や社会・経済システムなどを見出していくべきではないでしょうか」と、生成系AIとの共存の道を模索する考えを示した。
新しいツールの生成系AIは気軽に使えて便利そうだが、一方で留意点もあるようだ。では、具体的に学生や教職員は、チャットGPTなどの生成系AIをどのように役立てればいいのか。文章を書いた東京大学の太田邦史理事・副学長に話を聞いた。
作業の補助や相談役として役立つ
――なぜチャットGPTなどの“生成系AI”に関する文章を公開したの?
生成系AIは一定程度質の高い文章や画像を生成することが可能であり、この技術は論文やレポート課題などの大学での教育・研究活動に大きな影響を与えます。一方で、大変新しい技術ですので、どのように対応すべきか、あるいは使用ルールなどを東京大学の方針として定めておりませんでした。
一部の海外大学ではキャンパスでの利用を禁止する動きも見られていました。そのため、1月末の情報システム戦略会議という学内会議で本件についての調査や検討を指示しました。
また、「どこでもキャンパスプロジェクト」という、デジタル技術と教育を考える会議体があり、情報系の教員などを交えてその可能性と問題点について議論を行ってもらいました。その結果、単に禁止するのではなく、大学教育にも良い形で活用できるように議論を行う必要があるとの提言を得ました。
これらの提言を踏まえ、実際の研究・教育現場において教員や研究者、学生がAIツールに対してどのような心構えをすべきか、学内での意識共有を目的として発信したものです。
――生成系AIは学生にはどんな点で有用?
既にインターネット上にある情報を一定程度の精度で集約できる長所を生かした調査・分析、文書のアウトライン作成や修正、コンピューター・プログラミングのサポートなどにおいては非常に有用だと考えます。
また、膨大な情報量に加え、チャット形式でやり取りが可能なので、自分が考えている事についてのディスカッションやブレインストーミングの相手としても役立つツールと思います。
利用法や付き合い方は今後学内で検討
――大学として懸念していることはある?
機密情報や個人情報をチャットGPTに送信する事の危険性、知らない間に著作権等を侵害している可能性、などが挙げられます。
――チャットGPTなどを学生にどんなふうに使ってほしい?
利用する際は、書かれている内容の信ぴょう性、機密情報や個人情報の取り扱いなどの事項に留意してほしいと思います。
また、使用するツールとして認識するだけではなく、AI自体が生み出す価値や危険性、社会に対する影響も含めて広く考察・議論をしてほしいです。生成系AIがどのような変化をもたらすのか、また積極的な良い利用法や、新しい法制度や社会・経済システムについてはまだまだ未知な部分が多いため、研究者だけではなく学生も含めた大学全体の活動を通じて、そのような課題を大学が社会とともに解決していきたいと思っています。
――学位やレポートではどの程度の使用が認められるの?
前提として、本学において、現状は授業などでの生成系AIの使用について個別に規則やルールを定めていないので、どの程度まで認められるのか、についても定めていません。使用自体は禁止しておりませんので、生成系AIの利用法や付き合い方については今後学内での検討を進めていく予定です。
――論文やレポートがチャットGPTなどで作られたものか、教員は判別できるの?
現状では、高精度で判別するのは非常に困難な状況です。
試験方法などが変わっていく可能性も
――生成系AIの登場で試験や評価の方法が変わっていく可能性は?
試験方法なども変わっていく可能性は大いにあります。たとえば、書面審査だけではなく、対面のヒアリング審査・筆記試験を組み合せることなどが考えられます。この点についても引き続き検討を進め、(後日公表予定の)「AIツールの授業における利用について」の中でまとめていく予定です。
――「AIツールの授業における利用について」は、どのような内容になる?
授業における利用については、学内で検討中の段階であり回答できる内容はございません。1、2カ月以内を目処として、可能な限り早期に学内に対してお知らせできるように検討を進めております。
――学生に対して、さらにレクチャーなどを行う予定はある?
現状では、チャットGPTや生成系AIのみを対象としたレクチャーは予定しておりません。しかし、今後の検討状況に応じて必要ということであれば、学生や授業を行う教員向けの説明会や講習会などのインプット・意識共有の場を設定していくことは考えられます。
公開された文章の中には「ChatGPTが出たからといって、人間自身が勉強や研究を怠ることはできない」とも述べている。教育や学問の発展にどう生成系AIを生かしていくのかについては、さらなる検討が必要なようだ。
からの記事と詳細 ( 「生成系AIのみのレポートはNG」東大がチャットGPTへの見解を公表…理由と“付き合い方”を副学長に聞いた|FNN ... - FNNプライムオンライン )
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