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Monday, January 16, 2023

C型肝炎治療法進化 飲み薬のみ/副作用少ない新薬も 非代償性 ... - 東京新聞

 C型肝炎ウイルス(HCV)は、血液を介して体内に侵入。感染した人の約七割は、ウイルスが体内に残って肝臓で増殖し、細胞を傷つけ、肝機能を低下させる。ウイルスで炎症が続く状態が慢性肝炎で、徐々に細胞が硬い組織に置き換わり、肝硬変になる。さらに進むと、意識障害や黄疸(おうだん)、腹水などの症状が出る非代償性肝硬変になる。細胞のがん化も進み、肝硬変の状態では年6〜8%の確率で肝がんになる=図。

 HCVが発見されたのは一九八九年。それ以前は医療現場でも十分な感染対策が取られておらず、感染が広がった。厚生労働省の推計によると二〇一五年の時点で、国内のHCV感染者は少なくとも約九十万人いる。肝炎の人は一八年の時点で約三十万人。治療の進展や感染対策の徹底などで、感染者は減少傾向だが、未治療の人も少なくない。

 HCV発見から三年後、ウイルスを攻撃する物質「インターフェロン」を注射する治療が始まった。だが、だるさや発熱、白血球の減少などの副作用が出やすい上、我慢して治療を受けても効果を得られない人が多かった。千葉大大学院医学研究院の加藤直也教授(消化器内科学)=写真=は「当時の悪いイメージが強く、今も治療を受けない人がいる」と指摘する。

 一四年に飲み薬だけの治療法が登場し、副作用の少ない新薬も続々と開発された。ウイルスの遺伝子型や遺伝子変異の有無を調べ、条件に合った薬を飲めば、軒並み九割以上の確率でウイルスを体内から消せるようになった。

 ただ、肝臓の機能が大きく損なわれている非代償性肝硬変の人は治療の対象外だった。服用した薬を肝臓でうまく分解し、体外へ排出することができないため、血液中にたまった薬が肝障害を悪化させ、死亡にもつながる危険性があったからだ。

 一九年に登場した薬「エプクルーサ」は、肝臓では分解されない薬剤の組み合わせでHCVの増殖を抑え、作用後は肝臓に負担をかけずに排出される。重い肝障害の人に使える薬として承認され、昨年八月からは軽い慢性肝炎の段階から使えるようになった。従来の薬は、適用外の非代償性肝硬変かどうかを確認する細かい検査が必要だったが、エプクルーサは原則、HCVの感染が分かれば投与できるため、加藤教授は「より治療が受けやすくなった」と話す。

 薬の値段は一日分で約六万円と高価だが、基本的に約三カ月で治療が終わり、肝炎治療の医療費助成制度も使えるため、治療費の自己負担額は月一万円(高所得者では月二万円)までに抑えられる。ただ、ウイルスを排除しても、感染で受けた傷によって、がんになるリスクは残ると考えられている。加藤教授は「ウイルスだけでなく、加齢や過度な飲酒、過食も肝臓の細胞の遺伝子を傷つけ、がんを引き起こす要素になる。感染経験のない人に比べて、より一層、注意は必要」と指摘する。

 肝臓がんを引き起こす要因の一つ、C型肝炎。この十年ほどで治療法は大きく進化し、一般的に薬を二〜三カ月飲めば、ほとんどの人がウイルスを排除でき、治るようになってきた。最近では、意識障害などの症状が現れるまでに悪化した「非代償性肝硬変」の人でも、飲み薬による治療を受けられる。 (佐橋大)

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