今月から来月にかけ大学の後期授業が始まる中、東京・文京区の東洋大学では学生や教職員などを対象にしたワクチンの職域接種が始まり、多くの学生が接種に訪れています。
3万人余りの学生が通う東京・文京区の東洋大学では今月2日からワクチンの職域接種が始まりました。
6日は午前10時から900人を対象に行われ、会場の学生食堂には密にならないよう学生たちが分散して訪れていました。
大学がことし6月に行った意向調査では回答した学生の84%がワクチン接種を希望したため、7月から教職員を含め2万6200人に接種を始める予定でしたが、ワクチンの供給の遅れなどで1か月以上延期され、全体の規模を半分程度に縮小した上で開始したということです。
来月中旬までには希望者の2回目の接種を終える計画です。
接種を終えた2年生の女子学生は「打つ前は不安もあったが2回接種すれば祖父母にも会えるようになり、生活が少しでも元に戻るなら打ててよかった。オンライン授業が中心で家にこもっていたが、今後はキャンパスに通って友達にも直接会ってみたい」と話していました。
4年生の男子学生は「異物混入もあり悩んだが自治体で予約が取れず、病床もひっ迫しているので打てるうちに打とうと思った。感染リスクを考えるとオンライン授業の方が安心だが対策をした上で最後の大学生活を送りたい」と話していました。
後期授業については、緊急事態宣言などの状況を鑑みて来月末まではゼミや実験実習などを除き、原則オンラインで授業を行う方針を決めたということです。
東洋大学の東海林克彦副学長は「ひとりひとりに寄り添った対応を考えてきた中で学生からの接種要望が多くあった。大学の授業はオンラインでできる面もあるが、やはりキャンパスに来ることで得られる学びもある。ワクチン接種を進め、安心して教室で受けられる授業の割合を増やしていきたい」と話していました。
大学の職域接種はことし6月から始まりましたが、ワクチンの供給の遅れなどで予定が延期され、今月に入って1回目の接種を進めている大学もあります。
文部科学省によりますと、これまでに職域接種を希望した405大学のうち、5日までに1回目の接種を始めたのは323大学で、後期授業の開始が迫る中、今週も24大学で始まる予定です。
また、これらの大学を拠点に、連携して接種を進めている大学をあわせると、716大学になるということです。
一方、およそ40の大学がワクチンの供給が遅れた影響や自治体や他の大学と連携を進めたことで、職域接種を取り下げたほか、当初のスケジュールを延期した大学も多くあるということです。
文部科学省は、「ワクチンの供給の遅れなどで、一部の大学に大変ご迷惑をおかけした。先月の終わりから軌道に乗ってきたので、残る大学でも希望どおりの時期にワクチンを届けられるよう手配しており、9月いっぱいは順調に進む見込みだ」としています。
全国の大学では今月から来月にかけ後期授業が始まりますが、感染拡大の状況やワクチン接種の状況を踏まえ、対応が模索されています。
このうち慶應義塾大学は今月3日までに学生や教職員、委託企業の社員や他大学の学生など、およそ4万9000人への2回目の接種を終えたと公表しています。
後期授業については「変異株の猛威を含め感染状況は今後も予測が難しい状態にある」などとして十分な感染対策の上、対面授業とオンライン授業の併用を継続するとしています。
早稲田大学は、先月末までに、全ての学生の53%にあたる2万5500人への2回目の接種を終えているほか、新宿区など周辺自治体で優先的に若年層への接種が進められていることから、さらに多くの学生が接種したとみています。
後期授業については「感染状況によりオンライン授業の比率を上げる可能性もあるが、対面授業を基本としながらオンライン授業を併用する」としています。
近畿大学は2つのキャンパスで通学する学生の60%が2回目の接種を終えていて、後期授業は原則オンラインとしつつ、ゼミの少人数授業や研究活動などでは、感染対策と人数制限の上、対面で授業を実施するとしています。
横浜国立大学では、夏休み前までは対面を中心に授業を実施してきましたが、来月5日から始まる後期授業では卒業に必要な授業などを除き、来月末まで原則オンラインにするとしています。
東北大学では緊急事態宣言が出ている間は、実験や実習など対面が欠かせない授業を除き、原則オンラインで実施するとしていて、10月の後期授業の開始に向けては、宣言が延長されるかなど今後の感染状況を見ながら方針を検討するとしています。
学生のワクチン接種については、全国大学生活協同組合連合会がことし7月に行ったアンケート調査に回答した学生、7637人のうち、「すでに接種した」が12%、「接種したい」が43%、「すぐにではなく、いずれ接種したい」が31%で接種に前向きな人はあわせて86%となりました。
一方、「接種したくない」は11%でした。
アンケート調査では、学生生活についても聞いていて、「充実していない」「あまり充実していない」があわせて45%で、方法が異なることから単純に比較できないものの去年秋の調査から19ポイント増加しました。
また、「将来への不安」や「気分の落ち込み」「孤独感」、「生きていることが嫌だと感じる」といった項目は入学時からコロナ禍の影響が続いている大学2年生で高い傾向がみられました。
大学に対応を強化して欲しいこととしては、「学内で同級生とつながることができる機会づくり」と、「部活やサークルなどの課外活動の再開や活性化」がともに43%で、それに先輩との交流や、オンライン講義の質の向上などが続きました。
教育経済学が専門で海外の教育事情に詳しい慶應義塾大学の中室牧子教授は、「アメリカでは、大学が再開すると感染者が増加したという実証研究もあり、大学生のように行動範囲が広いと、同時に感染リスクも高いことは心に留めておく必要がある」としています。
その上で、「日本の大学生の接種希望者が少ないとは思っておらず、むしろ予約ができないとか実家に戻っているといった、さまざまなハードルがあると思うので、まずは接種を受けたい人が受けられる状況になることが非常に重要だ」と指摘しています。
その上で後期授業のあり方については、「ワクチンを接種していない人はオンライン授業にするというアメリカの取り組みは参考になるのではないか。またアメリカでは持病などでワクチンを打てない学生も含め、対面授業を受ける学生が週に2、3回PCR検査を無料で受けられる大学もある。日本の大学では体制面でも予算面でもまだ整っていないので、国の支援があれば非常に良いのではないか」と話しています。
そして、「海外では大規模な教室で着席して講義を受ける授業はオンラインでも対面でも教育効果は変わらないという研究がある。一方で、小規模なゼミや実習など対面に価値があるものもあり、ケースに応じて教育効果を見極め、取捨選択することが大事だ」としています。
からの記事と詳細 ( 大学 後期授業始まる前にワクチン職域接種急ぐ動きも|NHK 首都圏のニュース - NHK NEWS WEB )
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