人間の目で見るように、映像を描く。
今年夏、SONY(ソニー)から「人の脳のように映像を認識するテレビ」という触れ込みの4K有機ELテレビ「BRAVIA XR A80J」が発売されました。そんな新しい映像を実現するための新たなプロセッサーを搭載したBRAVIA XR A80Jは、米GizmodoのWes Davis記者によると、本当に驚くほどの美しさみたいです。以下、数週間使ってのレビューをどうぞ!
2021年のBRAVIAはいつもより特別な感じで発表されましたが、それには理由があります。BRAVIA XR A80Jは、新開発の「認知特性プロセッサー XR」を初めて搭載するテレビなんです。この新プロセッサーによって、ソニーいわく「人間が実世界の物を見るのと同じように映像を作り出せる」んです。
僕自身、BRAVIA XR A80Jを数週間使ってみた結果、もはや普通のテレビに戻るのが悲しくて仕方ないくらいです。だってBRAVIA XR A80Jは、僕が今まで目にしたテレビの中で最も美しいテレビなんですから。
SONY Bravia XR A80J
これは何?:パワフルな頭脳を持った、美しき有機EL・HDR・4KTV。
価格:1,800ドル(日本国内はオープン価格、ソニーストアでは30万8000円)
好きなところ:素晴らしい色、深み、コントラスト、明るい部屋でも美しいこと。
好きじゃないところ:モーションスムージングの設定が面倒、ゲーミング対応がなおざり。
スリムながらもポートは豊富
テレビのセットアップって、自力でやるのは意外と大変です。BRAVIA XR A80Jには3サイズありますが、一番小さいものでも55インチ、重量は42ポンド(約19kg)あるので、スタンドを付けて立てるだけでも誰かと一緒にやるほうが楽です。
スタンドといえば、これが良い意味でオーバーエンジニアされていて、組み立て方によって幅とか高さを選べるようになってるので、すっきりと低く設置したり、高く設置して下にサウンドバーとかを入れたりといったことが可能です。低めの設置の場合はネジ不要で取り付けられ、本体にスライドすれば気持ち良い音とともにしっかりとくっつきます。
低めに設置する場合、後ろのケーブルがほとんど見えないので、ある意味ケーブルマネジメントにもなります。テレビの頭脳部を収めた部分はすっきりとフラットで、ケーブルは下の部分から入れて、背面のくぼみに接続しますが、側面にもいくつかポートがあります。背面ポートへの接続は、裏側が見える状態なら、どのポートが何かはっきり書いてあるのでわかりやすいです。
BRAVIA XR A80Jには、背面と側面それぞれ3つずつHDMIポートがあります。HDMIポートはすべて同じではなく、ふたつはHDMI 2.1で4K映像を120Hzで出力でき、そのうちひとつはeARC/ARC対応です。他のふたつは通常のHDMI 2.0で、4Kは60Hzで扱えます。背面にはイーサネットポートと光デジタルオーディオ、USB、それからRS-232Cポートもあります。左側面にはHDMIに加えてふたつのUSBポートと3.5mmヘッドホンジャック、ビデオ/オーディオRCAミニジャックがあります。強いていえば、Nintendo 64をつなぐにはアダプターが必要です。
Google TVのある暮らし
BRAVIA XRを立ち上げると、最初にいろんなプライバシー許諾とか機能の有効化の画面が出てきますが、ここで一気に設定するか、後で個別に設定するかは選べます。ただ、このファームウェアにはやや工事中感があり、僕はテレビではなるべく細かいことせずに必要な機能だけ後で有効化したいほうなんですが、それに関して若干の問題がありました。でも、最初にあった2、3のバグは、最初のファームウェアアップデートで解消されたし、他の問題もおいおい解決すると思います。それにどのバグも視聴そのものには影響しないものだったので、特に大きな問題はないはずです。
設定が終わると、やたらカッコいい「設定完了!」的な動画が流れて、メニューが出てきます。Google TVを設定しない場合は、クリーンでベーシックなインターフェースで、ストリーミングアプリ4つが自動でインストールされてます。Netflix、Amazon Prime Video、YouTube、Disney+です。USB経由のメディアにもここからアクセスできるし、普通のテレビも見られます。
ただしGoogle TVを設定したほうが、BRAVIA XRのインターフェースをフル活用できます。個人的にはApple TVのインターフェースのほうがいろいろと好きな部分が多いんですが、Google TVにも長所があります。まず動作が素早く反応が良いし、本当に見たいコンテンツを取り出すのが上手です。とはいえ完璧じゃなく、基本的な並べ替え機能も一部ないし、特にライブラリセクションでブラウジングするときは横スクロールのみなのに、カテゴリ分けもなく見方を変えることもできません。
一般的なストリーミングアプリに加えて、BRAVIA XRにはソニー独自のストリーミングサービス「BRAVIA Core」も入ってます。ソニーのテレビだけで見られるBRAVIA Coreは、BRAVIA XRで見られるベスト映像のショーケースで、たとえば「Pure Stream」というセクションでは、Ultra HD Blu Rayに迫る最大80Mbpsでのストリーミングが可能です。BRAVIA XRを買うと、BRAVIA Coreで映画5本を無料で見られるクレジットが付いてきますが、ちなみにその動画はDolby Vision/Atmosじゃなく、IMAX Enhanced・DTSになってます。
ものすごい画力
ともあれ、肝心の画質の話をしましょう。BRAVIA XR A80Jの画質は、ほんとにものすごいです。55インチの有機ELパネルは端から端まで均一に輝いて、くっきりとクリアな絵を描きます。ただ極端な角度から見ると、ほんの少し、ほとんど気づかないくらいの色の変化がありますが、これは有機ELでは通常の現象です。IMAX Enhancedモードだと、僕自身がキャリブレーションした後の設定とほとんど同じで、Dolby Visionじゃないコンテンツのときは、ちょっと暗すぎるシネマモードよりこっちのほうが好きでした。僕は化石みたいなDVDコレクションもまだ大量に持ってるのでそれも見てみたんですが、BRAVIA XRはアップスケーリングもそつなくこなしてて、ノイズもうまく処理してました。「リアリティクリエーション」なる機能をオンにしておくと、顔を傾けて目を細めて見れば、古いコンテンツがHDみたいに見える場面もありました。
BRAVIA XRが一番(文字通り)光るのは、最近のメジャーなDolby Vision映画を見るときです。最近の映像はどんなテレビでもよく見えるように作られてるとはいえ、BRAVIA XRで『マイティ・ソー バトルロイヤル』を見たときは、ソーのハンマーの光の明るさ、それに対するスルトの洞窟の暗さに驚愕しました。映画がますますドラマティックかつスリリングになります。
Dolby Vision映画では、どれも色とコントラストが素晴らしかったです。色はきれいに分離し、グラデーションは滑らかで、光と闇はにじみもなくしっかり分かれています。テストしたなかで唯一色のディテールが失われてたのは、彩度を強調したカラーバージョンの『マッド・マックス 怒りのデスロード』だけでした。でも、それは僕が見る限り、どちらかというと映画のほうの特性です(同じ作品のBlack and Chrome Editionは素晴らしくきれいだったので)。
BRAVIA XRを見てると、今まで何回も見てきた映画のなかでも見逃してたディテールを発見できたし、たとえば『アトミック・ブロンド』みたいな色を抑えた作品の見え方も改めて楽しめました。画質について何かひとこと言わなきゃいけないとしたら、映像が黒に向かうのがやや急ぎすぎで、作者が見せたかった黒のなかのディテールが見えにくくなってたのかも、とは思います。でもその批判はちょっと求めすぎな感じがします。
一方ゲームに関しては、僕はNintendo Switchでしか使ってないですが、まあ問題ないって程度で、特に感動はありません。ゲームは期待する部分じゃないと思いますが、デフォルトのキャリブレーションはおとなしすぎる感じがしたので、ハイライトとか全体の明るさ、色設定とかをいじりました。入力のラグは感じなかったのでそれはいいんですが、そもそもBRAVIA XRはゲーム用に作ったわけじゃないと思います。HDMI 2.1ポートはふたつだけだし、リフレッシュレートは固定だしで、本気のゲーマーはその時点で買う気をなくすはずです。それでも万一BRAVIA XRの購入を検討してるゲーム好きがいたら、他のテレビにしたほうがいいって言いたいです。
テレビにしては驚くほどの良音
テレビに20数万円かけるってことは、多分別途のサウンドシステムも持ってる人だと思われますが、そうじゃない人でもBRAVIA XRなら大丈夫です。BRAVIA XRそのものの音が、びっくりするほど良い音だからです。ソニーは最近一般的な下向きスピーカーをやめて、画面の裏にアクチュエーターを付けるようになり、スクリーン自体をスピーカー化し始めました。この変更のメリットは、ソニーいわく「画面の特定の部分から出てくる音をより良く再現できる」ってことです。実際使ってみて、これが本当にその通り機能してるかどうか正直なんとも言えないんですが、とにかく音はリッチでバランスが取れてます。とはいえ、やっぱり何らかのしっかりしたサウンドバーを使った方が良いと思いますが、もしテレビだけで音を出す場合でも、BRAVIA XRの音は十分満足いくクオリティです。
ナイスなオマケ機能
BRAVIA XRのメニューを見ていくと、ややびっくりするくらい機能が続々出てきますが、それぞれの機能の名前を見れば何がなんだかだいたいわかります。ほとんどのメニューは映像処理の強さをスライダーで調節でき、各設定はそのとき見ている映像モードだけに紐付いています。モーションスムージング機能が「モーションフロー」と「シネマドライブ」のふたつあるんですが、それぞれ映像モードによってオン/オフできるだけじゃなく、入力の種類によってもオン/オフできるようで、映像モードと入力の種類の全組み合わせに対して調整し直さなきゃいけませんでした。ふたつの機能のうち便利に感じたのはシネマドライブのほうで、HighかLowに設定することで、24fpsコンテンツでパンしてるときによくあるガタつきを抑えてました。だからシネマドライブはずっとオンにしてましたが、モーションフローのほうはオフにしてました。たまに映画を見始めて、なんかメロドラマみたいだな…と思うとうっかりモーションフローがオンになってた、という感じでした。
もうひとつ良いと思ったのは環境に対し最適化する機能で、これは周りの明るさだけじゃなく音も検知しています。光に関しても、環境光センサーを使って明るさを調整すると同時に画像のトーンカーブも変化させていて、つまり明るい部屋では画面の暗い部分の明るさを強めます。環境音に関してはリモコンを使って、視聴中の部屋やその配置の音響環境に合うように音声をキャリブレートしてくれます。微妙なエフェクトなんですが効果的です。
ちなみにリモコンは、むやみに長いです。僕はもうライブのテレビ放送を見ないからあまり関係ないんですが、数字ボタンが押しにくい配置で、もうちょっとエルゴノミックな配置だったら良かったかなと思います。YouTubeとかNetflixといったストリーミングサービスのボタンのほうが優先されてる印象で、これらを使ってる人には使いやすいと思いますが、使ってないサービスのボタンは自分が使ってるサービスにマッピングし直せたりすると便利かなと思います。
買ってもいい?
全体的にBRAVIA XRは、映画好きには素晴らしいテレビです。画質にはディテールが詰まっていて、コントラストも素晴らしく、いろんなキャリブレーションやビデオフォーマットに対応してるので、映画を見る部屋の真ん中に置くものを探したら、現状では多分これが結論になると思います。金額があまり問題じゃないなら、より明るいBRAVIA XR A90Jにアップグレードしてもいいですが、微妙なディテールの差にプラス1,000ドル(ソニーストアでは差額7万7000円)の価値があるかどうか。ともあれ、TVに1,500ドル払ってもいいという人だったら、もうちょっとプラスしてBRAVIA XR A80Jを買う価値があると思います。
からの記事と詳細 ( 今まで見たなかで最も美しいテレビ:ソニー BRAVIA XR A80Jレビュー - GIZMODO JAPAN )
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