【シンガポール=森浩】駐留米軍の撤収が完了したアフガニスタンの首都カブールでは31日、イスラム原理主義勢力タリバン戦闘員が「完全な独立を獲得した」と歓声を挙げ、祝砲を放った。だが、国内では恐怖政治の復活や他のテロ組織の跋扈(ばっこ)など数多くの懸念が山積している。20年間駐留し、治安維持の重しだった米軍が姿を消したアフガンはさらなる混乱の入り口に立っている。
米軍が去ったカブール国際空港内には31日未明、タリバン戦闘員が次々と足を踏み入れた。幹部の1人は滑走路で「アフガンはついに自由になった」と叫んだ。カブールでは午前中から戦闘員が実弾とみられる祝砲を相次ぎ空に向けて発射する様子が見られた。
ただ、現地の公務員男性は「タリバンは歓喜しているかもしれないが、悲劇の始まりだ」と絶望感を語った。男性は閉鎖中の職場に復帰するようタリバン側から促されているが、殺害されるとの恐怖から拒否している。「米軍がいなくなったら、タリバンはやりたい放題になるだろう。不安しか感じない」と話した。
国内では旧タリバン政権(1996~2001年)同様のイスラム法の極端な解釈に基づく支配復活の兆しが出ている。娯楽を禁じる立場から、既にコメディアンや民族音楽の歌手が殺害された。戦闘員が米軍などに協力した人物のリストを手に自宅を訪問しているとも噂されている。
カブールでは8月26日にイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)傘下組織がテロを起こし、治安への不安が残る。また、タリバンは国際空港の運営をめぐってトルコに技術支援を求める考えを示したが、トルコ側は安全確保を条件としたもようだ。米軍撤収後、タリバンが他の勢力を制御し、国内を安定させられるかが焦点となる。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は混乱から逃れるため、年内に住民50万人以上が国外に脱出するとの見通しを示した。タリバンは海外脱出を制限する方針で、退避を望む国民を力で押さえつける可能性が指摘されている。
カブールに住む会社員男性(41)は「米軍がいた20年の間に立ち上がった民主制は数週間で崩壊した。国が100年ほど後退したように感じる。誰もが次の瞬間に何が起こるかわからずおびえている」と国民の心情を語った。
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