コロナ禍で2月下旬から延期となっていた米アカデミー賞の授賞式が25日(日本時間26日)、ロサンゼルスで行われる。今回は候補にまつわるさまざまな“史上初”が話題だ。「配信」のみの作品も初めてノミネートの対象となったほか、候補者に非白人や女性がかつてなく多く含まれる。主催する米映画芸術科学アカデミー(AMPAS)が推進する多様化がますます加速しているようだ。(水沼啓子)
クロエ・ジャオ監督、有力視
以前、同賞は白人ばかりが受賞することから「白過ぎるオスカー」と揶揄(やゆ)されることもあった。
流れの変化が誰の目にも明らかになったのは昨年だ。韓国映画「パラサイト 半地下の家族」(ポン・ジュノ監督)が英語以外の外国語作品として初めて、主要賞となる作品賞、監督賞などを受賞した。今年は昨年以上に多様な顔ぶれとなりそうだ。
まず監督賞。白人男性の牙城とされてきた賞だが、今回は白人男性以外の候補者が半数以上を占める。「ノマドランド」のクロエ・ジャオ監督は中国出身女性で、「ミナリ」のリー・アイザック・チョン監督は韓国系米国人男性。アジア系の2人が同時にノミネートされるのは史上初だ。
また、ジャオ監督と「プロミシング・ヤング・ウーマン」のエメラルド・フェネル監督の女性2人が同時に候補となるのも初。90年以上に及ぶアカデミー賞の歴史で、女性監督の監督賞受賞は2010年のキャスリン・ビグロー監督だけだ。
今回、監督賞にはジャオ監督が最有力視されている。受賞すればアジア人女性初となる。
「ノマドランド」女優訴え、契機に
一方、俳優4部門も今年は大きく変化。昨年は有色人種がシンシア・エリヴォ1人だったが、今年は候補20人中に、黒人のチャドウィック・ボーズマンら9人が入る。主演男優賞の候補で、非白人が過半数を占めたのは史上初。「ミナリ」で主演したスティーヴン・ユァンは韓国・ソウル生まれで、アジア系男性が主演男優賞にノミネートされるのも初めてとなる。
これまで女性や非白人系の監督、作品、俳優が評価されにくかった背景に、同賞で投票権を持つAMPAS会員の多くが「白人」そして「男性」だったことがあるが、この会員の構成比が変化しているようだ。
変革の大きなきっかけとなったのが今回、「ノマドランド」で主演女優・製作者としてノミネートされているフランシス・マクドーマンドが18年に行ったスピーチとされる。「スリー・ビルボード」で主演女優賞を受賞した際、壇上で「インクルージョン・ライダー」(包摂条項)という考え方について訴えた。
この包摂条項は、映画に出演する女性やマイノリティーなどを、ロケ地の人口構成比に合わせて登場させるというもの。白人男性偏重のハリウッドの歴史に一石を投じることとなった。
映画評論家の立田敦子さんは、「ハリウッドの最近の傾向として、女性や非白人にも光を当てることは必須。ここ数年、ノミネートの段階では非白人も必ず候補にあがってきているが、実際に受賞できるかが注目される」と話す。
コロナ禍で対象枠広がる
米国最大のマーケットであるロサンゼルスとニューヨークの映画館は、コロナ禍で約1年間閉鎖されたままだった。ハリウッド大作は公開を次々に延期。昨年、全米で劇場公開された新作はほとんどなかった。
こうした事態を受け、AMPASは選考対象となる作品の条件を変更。従来はロサンゼルス郡内の劇場で連続7日間以上、少なくとも1日3回上映といった要件が課されていたが、今回に限り、一部のインターネット配信作品も対象に。「Mank/マンク」「シカゴ7裁判」といったネットフリックスなどの配信サービスの作品も多数並んだ。
その結果、いつもならハリウッド大作に埋もれそうな作品も注目されることになった。黒人解放運動のリーダーを描いた「ジューダス・アンド・ザ・ブラック・メサイア」や、黒人差別を扱った「あの夜、マイアミで」などもノミネートされた。
■米アカデミー賞 米ハリウッドで最も権威のある映画賞。投票権を持つAMPAS会員によって選出される。米バラエティー誌によると、会員数は現在約1万人。会員の多くが白人男性に偏っていることが問題視され、2020年までに女性や白人以外の人種の会員数を倍増する目標を掲げていた。最初の授賞式は1929年。
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