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Saturday, September 26, 2020

米最高裁、保守支配強固に 反「中絶・移民」に傾斜か - 日本経済新聞

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米連邦最高裁判事候補に指名されたバレット氏(右)とトランプ米大統領(26日、ホワイトハウス)=ロイター

米連邦最高裁判事候補に指名されたバレット氏(右)とトランプ米大統領(26日、ホワイトハウス)=ロイター

【ワシントン=中村亮】米連邦最高裁判所で、トランプ大統領の価値観に近い判事が安定多数となる可能性が高まった。最高裁が人工妊娠中絶や移民の受け入れに否定的な立場へと傾くことを意味する。トランプ氏が再選を逃しても判事は代わらず、最高裁には数十年にわたりトランプ氏の影響が残る。

「彼女の能力は他の追随を許さず、経歴に一点の曇りもない」。トランプ氏は26日、ホワイトハウスで読み上げた声明で、最高裁判事に指名した保守派のエイミー・バレット氏をこう絶賛した。「米国の安全や自由、繁栄を守る」と強調し「バレット氏ほどこの目的に最も見合う人はいない」と訴えた。バレット氏は「能力の限り職務を全うすると誓う」と応じた。

最高裁の判断は米社会に大きな影響を及ぼしてきた。1973年に妊娠中絶を合衆国憲法が認める女性の権利だとする歴史的判決を下した。全米での同性婚を認め、首都ワシントンの銃規制を違憲と判断。共和党の価値観に近い保守派と、民主党に近いリベラル派が対立するテーマを決着させた。政治ではニクソン元大統領が不正行為の一部始終を収めたテープの開示を命じられ、辞任を決めた。

日常生活に影響が直結するだけに最高裁の動向に国民の関心はきわめて高い。CNNテレビの8月中旬の世論調査では11月の大統領選の投票先を決めるうえで最高裁人事が「極めて重要」「とても重要」との回答は合計で69%にのぼる。

トランプ氏はバレット氏を承認できれば政権の政策実現に追い風とみる。判事9人のうち保守派を少なくても5人確保できたとみるからだ。今夏は保守派とみられてきたジョン・ロバーツ長官が中絶や性的マイノリティー(LGBT)の権利をめぐる訴訟でリベラル寄りの判断を示し、保守派が相次いで敗れた。政権内で「ロバーツ氏に失望した」(ペンス副大統領)と不満が募っていた。

保守派のバレット氏は信仰心の厚いカトリックとして知られ、トランプ政権の政策と考えが重なる面が多い。たとえば妊娠中絶に関し、女性の権利を認めた73年の判決を尊重しつつも州政府による制限に理解を示す。

2019年以降に保守色の強い州では胎児の心拍が確認されたり、妊娠から8週間が経過したりすれば中絶を禁じる法律が相次いで成立した。中絶に厳しい条件をつけて事実上困難にするねらいだ。反対訴訟も相次ぎ、米メディアによると最高裁に持ち込まれる可能性がある州の中絶制限が少なくても17件ある。バレット氏が加われば最高裁が州法を合憲と判断する可能性が高まりそうだ。

医療保険制度改革法(オバマケア)に盛られた個人の加入義務を最高裁が12年に合憲と判断すると、バレット氏は「法律を拡大解釈している」と一部の判事を批判した。

米最高裁は保守派とリベラル派が対立する懸案を決着させてきた(ワシントン)

米最高裁は保守派とリベラル派が対立する懸案を決着させてきた(ワシントン)

トランプ政権は6月、オバマケアの無効を最高裁に申請し11月にも審理がある。低所得者に恩恵の大きい同法の存続が危ういとの懸念が広がる。移民政策では、バレット氏は生活保護を受ける移民の永住権取得を制限するトランプ政権の方針を支持。厳しい不法移民対策を認めるとみられる。

48歳という若さもバレット氏起用の理由だ。仮に18日に亡くなったルース・ギンズバーグ判事と同じく87歳まで職にとどまれば40年間近くにわたり影響力を持ち、判事の平均在職期間(16年間)を大きく上回る。トランプ政権下で承認された別の2人の保守派判事も指名時はそれぞれ49歳と53歳と若かった。終身制をフル活用し、最高裁の保守傾斜を長期化させる思惑が透ける。

トランプ氏が再選を逃し、民主党のバイデン政権が誕生しても最高裁が政策を阻止する可能性がある。たとえばバイデン前副大統領はトランプ政権が導入したイスラム諸国からの入国制限を廃止すると公約した。最高裁が18年に制限を認めた際は当時の保守派5人が賛成した。ここにバレット氏が加われば、判断が覆る可能性が極めて低くなる。

トランプ氏は再選に向け、判事指名を巻き返しの材料に使う考えだ。共和党関係者によると、上院司法委員会が10月中旬に公聴会を開き、11月3日投開票の大統領選の数日前に本会議で承認する案が浮上する。選挙直前に成果を出し、保守派有権者の投票率向上につなげたい意向がうかがえる。判事に女性を起用し、取り込みで後れをとる女性票の上積みもめざす。

米大統領選

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