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Thursday, February 27, 2020

ついに新型コロナウイルスの「市中感染」が米国で始まり、見えてきた2つの懸念|WIRED.jp - WIRED.jp

米国で新型コロナウイルスの感染経路が不明の「市中感染」とされる事例が発生した。政府レヴェルでの対策が本格化する一方で全米への感染拡大が懸念されるなか、2つの大きな懸念が浮かび上がってきた。

WIRED(US)

Coronavirus

JUSTIN SULLIVAN/GETTY IMAGES

米国のトランプ大統領が記者会見を開き、世界的に感染が広がる新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の対策担当にマイク・ペンス副大統領を任命すると発表した2月26日(米国時間)。米国でのアウトブレイクが新たな段階に入ったことを、米疾病予防管理センター(CDC)が発表した。CDCが「市中感染」した初の患者を報告したのだ。

市中感染とは、新型コロナウイルスの感染が広まっている地域への渡航歴はなく、新型コロナウイルス感染症「COVID-19」の患者との接触も確認されていない初めての感染患者が発生したことを意味する。『WIRED』US版の調査によると、患者の感染症が診断されたのは2月23日(米国時間)だが、その1週間前から北カリフォルニアの病院に入院していた。

患者がカリフォルニア州にいること以外にCDCは言及しなかったが、カリフォルニア州公衆衛生局は患者がサンフランシスコ近郊に位置するソラノ郡の住民であることを発表した。一部で指摘されているように、ソラノ郡には新型コロナウイルスの感染が広まった地域から帰国した米国人の一部が検疫期間に滞在した空軍基地がある。

患者はカリフォルニア州の病院に入院

こうしたなか、カリフォルニア大学デイヴィス校の微生物学者が26日(米国時間)の夜、所属する大学の病院にその患者が入院しているとTwitterに投稿した(のちに投稿は削除されている)。

デイヴィス校で配布された公式文書(人間健康科学部副学長兼デイヴィス校ヘルスセンター「UC Davis Health」の最高経営責任者(CEO)であるデイヴィッド・ルバルスキーと、デイヴィス医療センターの暫定CEO兼COOのブラッド・シモンズの署名入り)によると、患者は1週間前の2月19日からデイヴィス医療センターに入院しており、23日にCOVID-19と診断された。

医療センターは、患者が気管挿管され、人工呼吸器を装着していることを認めている。医療従事者が患者のウイルス感染を疑ったことから「飛沫予防策」を講じ、咳やくしゃみによる飛沫に接触しないよう注意してきたという。入院から診断が出るまでの時間差から、知らないうちにウイルスに晒されているデイヴィス校の医療従事者への懸念が生じている。

こうした問題はどこでも起こりうる。2月初めに『ニューヨーク・タイムズ』は、中国で1,700人以上の医療従事者が新型コロナウイルスに感染したことを報じた。感染者の一部は2月24日、医学誌『ランセット』に国際援助を懇願する論文を発表さえしている(新型コロナウイルス感染症患者は世界で82,000人を超え、約2,800人が亡くなっている。米国ではこれまで60例が報告されている)。

地元自治体では検査を実施できず

カリフォルニア大学デイヴィス校が配布した公式文書では、検査実施が遅れた説明として、デイヴィス医療センターがあるサクラメント郡の公衆衛生機関も、ディヴィス校があるデイヴィス市の公衆衛生機関も、新型コロナウイルス検査を実施していないことを指摘している。このためデイヴィス医療センターは、CDCに検査を依頼する必要があった。

大学の公式文書には、「患者はCOVID-19の既存の診断基準に合致していなかったことから、検査はすぐには実施されませんでした」と記されている。23日にCDCが検査を実施し、デイヴィス校は患者に対してより厳重な飛沫および接触感染対策を講じた。「今日、CDCは患者の検査結果が陽性だったことを確認しました」

この文書で医療センターは、COVID-19に感染した複数の患者を治療してきたことも認めた。このほど陽性が確認された患者に対しては最初から予防措置を講じていたことから、おそらく「曝露の可能性は最小」であるとも主張している。それでも次のように記した。「従業員の健康と安全を確保するため、用心に用心を重ね、少数の従業員には自宅待機し、体温を測定するよう求めています」

なお、CDCとカリフォルニア大学デイヴィス校のヘルスケア部門にコメントを求めたが、返答は得られていない。

全米で市中感染が広がる可能性

トランプ大統領は26日の記者会見で、国民の不安を和らげようと試みた。しかし公衆衛生当局は、新型コロナウイルスの市中感染を想定するように警告している。25日(米国時間)の記者会見でCDC内の国立予防接種・呼吸器疾患センターの所長ナンシー・メッソニエは、「国内で市中感染広がると予想しています」と語った。

それが現実になりつつあるいま、大きな懸念がさらに2つある。医療従事者は、新型コロナウイルスの具体的なメカニズムがまだ明確ではないが、感染力がかなり強いことを理解し始めている。

「感染者を見落としている可能性はあるのでしょうか? 今回の事例は見落としの可能性を証明しているかもしれません。感染者の規模がどの程度かという疑問の答えは出ませんが」と、ボストン大学国立新興感染症研究所で特殊病原体部門の医療ディレクターを務めるナヒド・バデリアは言う。

どの程度の感染者数かを正確に把握するには、実際に新型コロナウイルスを検査する米国の能力を飛躍的に高める必要がある。しかし、技術が追いついていない。これが最初の懸念だ。

『ワシントン・ポスト』が25日に報じたように、韓国ではこれまでに35,000件以上の検査が実施されたが、米国で実施された検査は500件未満にすぎない。しかも診断システムを所有しているのは、CDCと少数の地方公衆衛生当局だけだ。

ボストン大学のバデリアは、「新型コロナウイルスへの感染を検査できる場所はまだ多くありません」と語る。「今回の事例は、検査を利用しやすくし、患者の近くで検査をできるようにする必要があるというプレッシャーを強めることになります。検査によって正しい感染予防対策やその他の介入を実施でき、医療従事者やほかの患者を守れるようになります。患者にとってだけでなく、医療施設にとっても重要なのです」

つまり、医療体制を維持するために医療従事者を守ることも重要になってくる。これらを実現する鍵は、リソース、適切な防護服、そしてより多くのデータである。

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