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Monday, June 17, 2024

KDDIがGoogleメッセージを採用 +メッセージの終わりの始まり - 日経ビジネスオンライン

 KDDIは今後、米Google(グーグル)が提供する「Googleメッセージ」を、Android端末の標準アプリとして採用する。SMS(ショートメッセージサービス)の発展形であるRCS(Rich Communication Services)に対応したGoogleメッセージをKDDIが採用することは、同じくRCS対応の「+メッセージ」に引導を渡すことになるかもしれない。

2つのRCS対応サービスが併存

 グーグルは米国時間2024年5月14日、同社の開発者向けイベント「Google I/O」を開催した。スマートフォンの新機種である「Pixel 8a」を事前に発表したこともあり、基調講演ではAI(人工知能)に関する新技術のアピールに大半を費やしていた。

 それだけグーグルは、米OpenAI(オープンAI)に先行された生成AIの分野で危機感を抱いているのだろう。巻き返しを図りたい様子がうかがえた。

 同時期、国内でも非常に大きな動きが見られた。KDDIが2024年5月16日、同社が今後発売するAndroidスマホに、「Googleメッセージ」を標準アプリとして追加採用すると発表したのだ。

 GoogleメッセージはAndroid標準のメッセージアプリである。RCSに対応しているのが特徴だ。携帯電話のデータ通信を用いて、テキストだけでなく写真や動画も送れる。グーグルのAI技術を用いて写真を絵文字のように扱える「フォト文字」などの機能も備える。SMSよりリッチな表現が可能なのが大きなポイントだ。

RCSに対応した「Googleメッセージ」を使えば、SMSよりリッチなコミュニケーションが可能になる

RCSに対応した「Googleメッセージ」を使えば、SMSよりリッチなコミュニケーションが可能になる

(出所:グーグル)

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 Androidを開発しているグーグルのGoogleメッセージを、KDDIが自社Android端末の標準アプリに採用するのはごく自然に思える。だがGoogleメッセージがRCSに対応したアプリであることを考えると、この動きは非常に大きなインパクトをもたらす。

 なぜなら国内では2018年以降、KDDIとNTTドコモ、ソフトバンクの3社が同じくRCSに対応した+メッセージを提供しているからだ。このサービスは現在、RCS対応の「Rakuten Link」を提供する楽天モバイル以外のユーザーであれば利用できる。このため+メッセージは多くのスマホにインストールされている。2024年1月末には利用者が4000万人を突破。国内では非常に大きな基盤を持つサービスとなっている。

 それにもかかわらずKDDIは、+メッセージに加えてGoogleメッセージも標準採用することを打ち出した。一連の動きは利用者に混乱を与えかねないように思える。なぜKDDIは、Googleメッセージを標準採用するに至ったのだろうか。

KDDIら携帯大手3社は2018年から、RCS対応サービスとして「+メッセージ」を提供している。写真は2018年4月10日の新コミュニケーションサービスについての記者説明会から

KDDIら携帯大手3社は2018年から、RCS対応サービスとして「+メッセージ」を提供している。写真は2018年4月10日の新コミュニケーションサービスについての記者説明会から

(写真:佐野 正弘)

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本命はiPhoneのRCS対応

 その最大の狙いは、実はAndroid端末ではなく米Apple(アップル)の「iPhone」だと考えられる。

 iPhone標準のメッセージアプリ「iMessage」で利用できる機能の多くは、iMessageでしか利用できない。Android端末ユーザーなどとやり取りをする際は、SMS等を用いる必要がある。このため、競合メーカーから不満の声が少なからずあった。

 そうしたことからグーグルは、携帯電話事業者の業界団体「GSM Association(GSMA)」で標準化されているRCSをGoogleメッセージで採用するとともに、アップルにもRCSを採用するよう呼びかけるキャンペーンを実施していた。

 それに加えて一時、iMessageがデジタル市場法の規制に抵触するかどうかEU(欧州連合)が調査を進めていたことなどもあってか、アップルは2023年11月にRCSを採用する方針を打ち出した。

グーグルはRCSを採用するとともに、キャンペーンサイトを設置するなどしてアップルにもRCSの採用を求めていた

グーグルはRCSを採用するとともに、キャンペーンサイトを設置するなどしてアップルにもRCSの採用を求めていた

(出所:グーグル)

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 最終的にアップルがどのような形でRCSを取り入れるのかは不明だ。ただ一連の動きによって今後、Android端末とiPhoneのどちらでもRCSによるメッセージのやり取りが可能になると考えられる。

 そこで問題になってくるのが+メッセージの存在だ。iMessageが独自仕様だったこともあり、iPhoneとAndroid端末との間ではRCSを用いたメッセージのやり取りが難しかった。このためOSを問わずに利用できるメッセージアプリが求められた。このことが、+メッセージを携帯3社が提供するに至った理由の1つと考えられる。

 だがアップルとグーグルというプラットフォーマーが提供するアプリでRCSが使えるようになれば、+メッセージを提供する意義は薄れてくる。とはいえ、既に+メッセージの提供開始から6年が経過しており、ユーザーを多く抱えている。そこでKDDIは、+メッセージとGoogleメッセージの両方を提供することにしたのではないだろうか。

枠組みに限界、経営方針も影響か

 今回の発表で何より驚いたのは、Googleメッセージの標準採用を打ち出したのが、+メッセージを提供する3社の中でもKDDIだったことだ。なぜならKDDIは、携帯3社の中で最も+メッセージに力を入れてきた、サービスの推進役だったからだ。

 それだけにKDDIがGoogleメッセージを採用したことは、ある意味で+メッセージに引導を渡す動きと見て取れる。なぜKDDIがこのような動きを見せたのか。理由の1つとして、+メッセージの枠組みの限界が挙げられるだろう。

 +メッセージは携帯大手3社が共同で提供している。このため事業をリードする主体を明確にできない。加えてサービス開発にも3社の意向を反映する必要がある。そのため、どうしても事業のスピード感が欠けてしまう。

 実際、+メッセージは積極的に活用されているとは言い難い。例えば+メッセージは、企業や自治体などが作成できる「公式アカウント」を2019年から展開している。だが2024年時点で確認できる公式アカウントは数十程度。多数の公式アカウントを抱えるLINEヤフーの「LINE」と比べると差は大きい。利用者が4000万人を超えているといっても、各社ともに+メッセージのサービス拡大には限界を感じていたというのが正直なところではないだろうか。

+メッセージは企業などが作成できる公式アカウントを2019年から展開しているが、現状その数は増えていない。写真は2019年4月23日、「+メッセージ」機能拡充に関する記者説明会から

+メッセージは企業などが作成できる公式アカウントを2019年から展開しているが、現状その数は増えていない。写真は2019年4月23日、「+メッセージ」機能拡充に関する記者説明会から

(写真:佐野 正弘)

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