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Monday, February 5, 2024

【連載①・秩父宮のゆくえ】始まりは国立競技場の老朽化。神宮外苑再開発の必要性。 - RUGBY REPUBLIC(ラグビーリパブリック)

 秩父宮ラグビー場の未来、いや日本ラグビー界の未来を左右する、神宮外苑地区の再開発事業。
 その動きがいま、鈍化している。

 主な要因は、活動家や著名人による樹木の伐採への反対運動だ(ちなみに秩父宮ラグビー場のバックスタンド裏にある『いちょう並木』は伐採しない)。
 東京都は昨年9月、事業者である三井不動産や明治神宮などの4者に、神宮第二球場周辺の樹木の伐採を始める前に、伐採本数を減らすなど樹木保全の具体策を示すよう要請した。伐採は9月にも始まる予定だったが、直前で「待った」がかかったわけだ。

 現在は第二球場の解体をほとんど終え、木だけが残っている状態。その跡地に建設予定の新秩父宮ラグビー場はこの先、どうなっていくのか。

 そもそも、なぜ神宮外苑地区の再開発事業が始まったのか。いま一度、振り返るところからこの連載を始めたい。

 そもそもの始まりは、スポーツ施設の「老朽化」だ。

 旧・国立競技場は建設から半世紀以上経ち、老朽化や機能面の劣化で、大規模な国際競技大会での活用が困難となっていた。

 ラグビーワールドカップ2019日本大会の開催が2009年に決まったこともあり、2010年前後で度々「国立の在り方」が議論される中、’11年に東京都がオリンピック2020への立候補を表明。翌’12年には同五輪のメインスタジアムとするべく、国立競技場の建て替えが決定した。

 こうした動きの中で都は、神宮球場や秩父宮ラグビー場を含む神宮外苑地区を「日本が世界に誇れるスポーツクラスター(集積地)」として整備することにしたのだ( ’13年)。
 ’15年には東京都や地権者が覚書を締結、大規模計画が承認された。

 国立競技場と同様、戦前から戦後直後に建てられた神宮球場や秩父宮ラグビー場は、以前から漏水や腐食、亀裂などの老朽化をはじめ、他にもさまざまな問題、課題を抱えていた。築年数はそれぞれ「98」と「77」だ。

 秩父宮ラグビー場の管理・運営を担う、日本スポーツ振興センターの関係者は嘆く。

「利用する選手たちは若いときから親しみを持ってくれている方が多いと思います。ですが、世界各国には素晴らしいスタジアムがあり、国内でもスタジアムがどんどん改修されている中で、(いまの環境では)施設管理者側として心苦しさがあります」

 座席幅が狭かったり、全席にドリンクホルダーがなかったり。車椅子スペースやトイレが不足しているだけではなく、神宮球場には不揃いな段差の階段もあり危険だ。

 なかでも大きな問題となっているのは、来訪者のためのオープンスペース(ゆったりできる広場)の不足と「狭過ぎる」コンコース(歩行者通路)だ。
 外苑前駅からラグビー場までの歩道、そしてラグビー場内での混雑たるや。身動きが取りづらい経験をした方がほとんどだろう。

 神宮球場ではその問題がより深刻。球場の外周スペースの狭さは、球場運営に支障をきたすほどだ。選手を乗せたバスは来訪者が通る歩道を横切る必要があり、安全を担保できていない。

 観客の目には見えにくい課題もある。秩父宮では運営スタッフの控室が少ないために、倉庫を休憩所代わりに使っている。エレベーターは一つしかなく、チーム関係者、放送関係者、VIPが共用している。選手にとっても更衣室が狭かったりと、快適な環境とは言い難い。

 こうした現状の課題を解決するにはより広い敷地が必要で、甲子園球場のように現敷地での建て替えやリニューアルが困難なのだ。
 年間で約450試合以上開催される神宮球場では、利用者への影響を鑑みれば5年以上を要する工事は現実的ではないという側面もある。

 そうして持ち上がったのが、施設の配置転換だ。秩父宮ラグビー場の跡地には新たな神宮球場が入り、新秩父宮ラグビー場は神宮第二球場の跡地に建設される。これでスペースと時間が確保された。
 オープンスペースの割合は、約21㌫から44㌫程度にまで増加する予定。中央広場は、災害時の広域避難場所としても活用できる。

 ①神宮第二球場の解体→②新秩父宮ラグビー場の建設→③秩父宮ラグビー場の解体→④新神宮球場の建設→⑤神宮球場の解体→⑥中央広場の整備と、段階的に工事を進めることで、各競技の中断期間も最小化できる。

 ちなみに、新秩父宮ラグビー場の運用開始は’27年の12月末を予定。南側ゴール裏付近に併設されるテラス等の付帯施設は、現在の神宮球場の敷地内と重なるため、中央広場の整備(⑥)のタイミングで建設される。すべての施設の建設が完了するのは’34年5月末の予定だ。

 最後に。この再開発事業で触れるべきは明治神宮”内苑”の存在だ。内苑は広大な敷地を有し、約3万6000本の樹木が広がっている。この樹木の維持管理を含めた内苑の公益的な活動全般は、神宮球場の事業収入をはじめとする外苑の収益に頼っている。内苑の緑を守る「意義ある再開発」であることも、忘れてはならない。

 次回は新秩父宮ラグビー場の概要とその魅力に迫る。設計から建設、運営までを担う事業グループ「秩父宮ラグビー場株式会社」(代表企業=鹿島建設)に話を聞いた。

*ラグビーマガジン3月号(1月25日発売)の記事を再掲

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