平安時代から海上交通の要衝として栄えた港町「兵庫津(ひょうごのつ)」があった神戸市兵庫区に、開館した兵庫県立兵庫津ミュージアム。同県の始まりの地でもある兵庫津の歴史や県を構成する五つの地域「ひょうご五国」の魅力を五感で体感できる空間は、幅広い世代が楽しめる地域博物館だ。【桜井由紀治】
現在の兵庫区沿岸は、平安時代に大輪田泊と呼ばれ、瀬戸内海の交通の要衝となった。12世紀後半、大型船が入港できるようにした平清盛による大改修を経て栄え、鎌倉時代には兵庫津の名称となった。幕末期には開港場となり、1868年5月23日に兵庫県庁が置かれた。
同ミュージアムは、江戸建築で復元した「初代県庁館」(2021年11月開館)と、兵庫津やひょうご五国(摂津、但馬、淡路、播磨、丹波)の歴史を紹介する「ひょうごはじまり館」(22年11月開館)の2館からなる。
1868年の町並み描いた図を展示
「はじまり館」は3階建て延べ約3880平方メートル。館内に入ると、1868年当時の兵庫津の町並みを描いた鳥瞰(ちょうかん)図(4・2メートル四方)が足元に広がる。
案内してくれた笠井敏光館長によると、コンセプトは「肩が凝らない博物館」。従来の博物館は「勉強・難しい・面白くない・古臭い」などのイメージもあり、一般の人には気軽に行きにくい雰囲気があったという。
笠井さんは「展示は、見て・聞いて・触れるを重点に歴史の面白さを伝える工夫をしました」と胸を張る。
デジタルで魚捕り疑似体験
その言葉通り、体験型のデジタル展示が目を引く。江戸時代に大型のいけすが設けられた「兵庫生洲(いけす)」を、プロジェクションマッピングで再現。魚捕りの疑似体験もでき、子どもたちが夢中になる。
他にも、手で触れると絵が動き出すハンズオン展示や、県内各地の古写真に入り込んで撮影できる「ひょうご今昔」も設置され、ゲーム感覚で学べる。
ダイナミックシアター(横幅13メートル、高さ3メートル)では、歴史上の人物が織りなす激動のドラマを上映している。
肩は凝らないが、歴史的意義はしっかりと伝えている。清盛は「この港に外国の船を呼ぼう」と、荒れていた兵庫津を大改修で大きく変えた。海洋都市にという夢は、外国船舶が行き交う現在のミナト神戸へとつながった。
中世・室町時代、日明貿易を手がけた足利義満は、自ら明の使節を送迎した。京から船の発着港の兵庫津へ、7年間に11回も足を運ぶほどの力の入れようだったという。
初代県知事・伊藤博文の執務室
隣の初代県庁館は、平屋建て約540平方メートル。当時を描いた絵巻「兵庫勤番所絵図」を基に、裁判が行われた吟味場(お白州)や犯罪者を拘留する仮牢などを再現した。初代県知事で、のちに初代内閣総理大臣となる伊藤博文の執務室もある。
現実の風景と画像を組み合わせた複合現実(MR)ゴーグルを装着すると、誰もいない執務室に伊藤らが現れ、幕末維新期の場面を目の当たりにできる。
初代県庁舎が兵庫津に設置されたのは、開港で外国とやりとりする拠点が必要だったからだが、この庁舎が使われたのは数カ月のみ。外国人が暮らす居留地から離れていて不便だとして、居留地に近い現在の神戸地裁(神戸市中央区)の場所に移った。伊藤ら当時の役人はさぞかし、ドタバタしたことだろう。
兵庫県立兵庫津ミュージアム
神戸市兵庫区中之島2の2の1。市営地下鉄海岸線・中央市場前駅から徒歩5分。開館時間は午前9時~午後5時(4~9月は午後6時まで)。月曜休館。入館料は大人300円、大学生200円、高校生以下無料。初代県庁館にはカフェもあり、伊藤博文の好物だったというビーフシチューのセット(1050円)が人気。同ミュージアム(078・651・1868)。
からの記事と詳細 ( 「始まりの地」で兵庫の歴史を五感で学ぶ 県立兵庫津ミュージアム - 毎日新聞 )
https://ift.tt/LIVfyBq
No comments:
Post a Comment