◇渋谷真コラム・龍の背に乗って ◇5日 中日 8―3 巨人(バンテリン)
逆転打の細川を一塁に置いて、ついに、やっと、待ちわびた放物線を、3万6304人のファンとともに見送った。派手なガッツポーズつきの一発が、石川昂にとってもチームにとっても15日ぶり。リーグトップの中田翔が7本だというのに、全員で4本だったのだ。
「そういう珍記録も知ってました。(ネットなどで)見かけたので、悔しかった」。あれだけ出なかった一発なのに、福永も続いてプロ1号。何もかも押し流した8回の猛攻だった。
21歳の4番は、球団史をさかのぼること、何と64年。新人だった江藤慎一以来である。「お名前は聞いたことがあります」と石川昂。そりゃそうだろう。僕だって話したことも会ったこともない。だから直接、指導を受けた人間に教えてもらった。
「僕も最初はそんなにすごい人とは知らなかったんですよ」と言ったのは大西外野守備走塁コーチ。プロ入り前に所属した天城ベースボールクラブ(のちにヤオハンジャパン)の顧問が江藤さんだった。何としてもプロへ…。内角球に弱かった大西は、江藤さんに相談した。
「あの人はこう言ったんですわ。『嫌いなら打たなきゃいいんだ』って。『オレはプロ野球で首位打者になった男だ。そのためには4タコをなくすことなんだ。わかるか?』って。衝撃的でしたね」
史上2人しかいない両リーグ首位打者。打率は割り算だ。四球を選べば3タコで済む。得意なコースを仕留めれば4の1になる。1回の右飛に続き、4回の絶好機は併殺打、6回は腰砕けの三振。「本当に悔しかった」と言った石川昂は、4打席目に甘いフォークを運びきった。4打数1安打、2打点。これも4番の仕事である。
朝食のシメは空いたドンブリにビールをなみなみと注ぎ、一気に飲み干し「ごちそうさん」。そんな豪快エピソードは知らない石川昂は、こう言ってくれた。
「自分も大打者になれるよう、がんばります!」。短所は捨てろ。長所を磨き抜け。先代の21歳の4番は、大切な教えを残してくれている。
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