2020年にSNSで中傷を受けて命を絶ったプロレスラーの木村花さん(当時22)の母、響子さん(45)が長野県佐久市で講演し、命の大切さやSNSが抱える課題を知った上での適切な利用について、聴衆に語りかけた。講演後、誹謗(ひぼう)中傷による被害者支援などを定めた条例制定を求め、同市の柳田清二市長に要望書を手渡した。
木村花さんはフジテレビが制作した恋愛リアリティー番組「テラスハウス」に出演していた20年、SNSで誹謗中傷を受けて亡くなった。母親で元プロレスラーの響子さんは、誹謗中傷を減らそうと、東京でNPO法人「リメンバーハナ」を立ち上げ、学校などで講演を続けている。
響子さんは20日、佐久市の「人権・男女共生フェスティバル」に招かれ、講演で花さんが亡くなった時のことを振り返った。当初は警察に「誹謗中傷は罪に問えない」と言われたこと、自ら証拠を集めるため、花さんの葬儀でも、中傷をスマホで探さざるを得なかったこと――。「ものすごい数の言葉を本人の横で探しました」。心を無にして、何も感じないようにしていたが、涙があふれた。
心ない多くの言葉を目の当たりにしたショックで文字が読めなくなり、一時は励ましの言葉すら理解できなくなった。「中傷は一生の傷になる。学校の授業ではSNSの使い方などを教えてほしい」
髪形を、プロレスラーの現役時代と同じアフロヘアに戻したのは、自分を奮い立たせたかったから。「最初は外に出られず、引きこもりのような状態だった。強い気持ちがほしかった」。ネット上では髪形についての中傷もあったというが、「人権は自分らしく生きる権利だと思っている」と前を向いた。
響子さんは、交流型のSNSで子どもが犯罪に巻き込まれるケースを紹介しながら、国内でSNS利用の年齢を制限する法律がないことを指摘。「日本でも法律が出来るように訴えていきたい」と話した。
響子さんらの署名活動もあって、厳罰化された侮辱罪が7月に施行された。批判と誹謗中傷、それぞれの定義に触れつつ、SNSの危険な側面にも言及。「傍観者もいるが、いじめられた人は、全員にいじめられたと受け取ってしまう。そんな時は通報システムを利用して」と呼びかけた。
講演の最後、会場に花さんの映像を流した。幼少期や、レスラーとしての活躍、親子で対戦が実現したときを振り返り、「一人一人がみんなに愛されて大きくなる。自分と異なる意見があっても、その人を愛する人もいる。一度のみ込んで、優しい言葉に変えてほしい」と締めくくった。
「リメンバーハナ」は講演などのための移動費用や活動資金のため、ホームページ(https://rememberhana.com/)で寄付を受け付けている。(高億翔)
からの記事と詳細 ( 木村花さんの母「異なる意見ものみ込んで」:朝日新聞デジタル - 朝日新聞デジタル )
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