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Friday, October 14, 2022

「神栖に特別支援校を」 鹿行地域は鹿島のみ 通学時間や児童急増など課題 週明けにも母親ら新設求め署名活動:東京新聞 TOKYO Web - 東京新聞

長男の蒼頼ちゃん(右)に経管で栄養を補給する中谷みずほさん(左)=神栖市で

長男の蒼頼ちゃん(右)に経管で栄養を補給する中谷みずほさん(左)=神栖市で

 鹿行地域で唯一の特別支援学校である鹿島特別支援学校(茨城県鹿嶋市)が、遠方からの長い通学時間や児童・生徒数の急増といった課題を抱えている。障害児や保護者に大きな負担がかかっている現状を変えようと、隣の神栖市で脳性まひの男児を育てる母親が中心となり、同市内での特別支援学校新設を求める署名活動を週明けにも始める。(長崎高大)

◇片道80分

 県立の特別支援学校は二十三校あるが、鹿行には鹿島の一校のみ。鹿嶋、潮来、神栖、行方、鉾田の五市が通学区域で、最も遠い神栖市の旧波崎町からは通学バスで片道八十分かかる。県の内規で通学時間は八十分以内と決められているため、上限ぎりぎりだ。自宅からバス停までの移動を含めると、片道二時間近くかかる子どももいる。

 鹿島には主に知的障害児が通うが、一部、肢体不自由児なども受け入れている。児童・生徒数は現在三百五十二人と、県内ではつくば特別支援学校(つくば市)に次いで多い。児童数が百五十人を超えるのは全国でも二十六校(二〇二一年度)しかなく、小学部だけで百五十二人が在籍する鹿島は全国的にも「マンモス校」と言える。

◇1日2往復

 神栖市の中谷みずほさん(34)は来年度から、脳性まひの長男蒼頼(そら)ちゃん(6つ)を鹿島に通わせる予定だが、肢体不自由児で医療的ケアが常時必要となるため、通学バスは利用できない見通しだ。自宅からは片道約三十分だが、自身で送迎すると一日二往復することになり、負担は大きい。

 中谷さんは、こうした課題の解決を目指して「神栖市に特別支援学校を求める会」を結成。署名を集めて県と県教委に提出する予定だ。鹿島では百三十人が神栖市から通学しているが、県内には児童・生徒数が百人以下の特別支援学校もあり、神栖市だけを通学区域としても規模では問題はない。

 中谷さんには将来、肢体不自由児が学校を卒業した後の居場所づくりをしたいとの思いがある。十一月からは、社会福祉士の資格を取るため大学に通う予定だ。当面はオンライン授業だが、三年生になると実習もあるといい、送迎との両立に不安を感じている。

 「肢体不自由児の親は、仕事もできないケースが多いと聞く。卒業までの十二年間、仕事もできず送り迎えだけしかできないとすれば、負担が大き過ぎる」と胸の内を語った。

◇卒業後に差

 鹿島の前PTA会長、竹中柳子さん(46)も多過ぎる児童・生徒数が問題と考え、中谷さんと共に声を上げる。仮設校舎を建てるために運動場が狭くなったり、職員の駐車場をつくるために子どもが園芸をしていた植え込みをなくしたりと、教育環境への影響は年々強まっているという。

 運動会も以前は全校一斉開催だったが、現在は学年で分けている。「学年を超えたつながりが特別支援学校の良さの一つなのに、それがなくなってしまった。学習環境として最適とは思えない」と懸念する。

 PTA会長時代には、通学時間の長さについて複数の保護者から不満の声を聞いた。「自宅が遠い子は一時間以上かかるのに対し、近い子はその時間に放課後等デイサービスで教育を受け、自分でできることを増やしている。この差は卒業後の選択肢の差にもなってくる」と指摘する。

◆鹿島特別支援学校 12学級はプレハブの仮設校舎

児童・生徒数が県内で2番目に多い鹿島特別支援学校=鹿嶋市で

児童・生徒数が県内で2番目に多い鹿島特別支援学校=鹿嶋市で

 鹿島特別支援学校では、本年度から敷地内に増築した新校舎を使っている。だが、増築分を含めても一般の校舎だけでは教室が足りず、十二学級はプレハブの仮設校舎に入っているのが実情だ。

 ただ、石上智子校長は本紙の取材に「教室は足りている。児童・生徒が増えた分、教員も増えており、(子どもの)人数が多いこと自体に課題があるとは考えていない」と話す。

 県教委は、鹿島の長時間通学について「課題として把握はしている」としつつ、現時点で鹿行地域に特別支援学校を新設する予定はないと説明する。

 特別支援教育の浸透もあり、特別支援学校の児童・生徒数は少子化の中でも右肩上がりで増えてきたものの、県の推計では増加のピークは二〇二四年度。その後は減少に転じる見込みのため、新設に慎重になっている面もあるようだ。

 それでも、県内で最も児童・生徒が多いつくばに勤める寺門宏倫教諭は「どれだけ子どもが多くても音楽室やプールは一つだけだし、駐車スペースなどの問題で学校イベントの開催も困難になってくる。管理職の目が行き届かない部分も増えて、柔軟な対応が難しくなるのでは」と大規模校の弊害を指摘する。

 各地の議会も、特別支援学校の問題を課題と捉えている。神栖市議会は九月末、新設の請願を採択。県と県教委に対し、市内への設置を求める意見書を提出する方針だ。鹿嶋市議会は五月、市議有志が鹿島特別支援学校を視察している。

 つくば市議会も昨年十二月、県南地域への増設を求める意見書を可決。地元市民団体が近く、県と県教委に署名を提出する予定だ。

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