新型コロナウイルス感染者の全数把握の簡略化が26日、全国一律で始まる。感染症法に基づく発生届の対象者を高齢者らリスクの高い人に限るため、医療機関による詳しい報告の対象外となる軽症者が自宅療養中に容体が悪化した際、どうやってスムーズな治療へとつなげるかが課題となる。(榊原智康)
簡略化により、発生届で氏名や住所など詳しい報告をするのは、65歳以上と入院が必要な人、重症化リスクがある人、妊婦に絞る。これに該当しない人は、医療機関の受診や検査キットによる自己検査で感染していることが分かったときに、都道府県が設ける陽性者登録センターなどの窓口にウェブを使って氏名や住所、電話番号などを自主的に届け出てもらう。
都道府県によって登録後の感染者へのフォローアップ体制は異なるが、東京都や埼玉県などは感染者向けの健康管理システム「マイハーシス」を活用する。登録した電話番号あてに、接続に必要なIDが送られてくる。体温などの健康状態を感染者が自ら入力し、看護師らによるチェックを受ける。
◆急変時の入院調整のためにも自己登録を
都医師会が7〜8月に新型コロナによって都内で死亡した913人を分析したところ、60代以下が約10%、基礎疾患のない人が約13%だった。都医師会の新井悟理事は「最初は症状が軽くても、その後悪化して重症化したり、亡くなったりする人が出ている。このような人たちをどう救うかが重要だ」と話す。
新井理事はデータから「死者のうち1割弱が、発生届が提出されないまま亡くなる可能性がある」と概算する。軽症者の症状が悪化した際にスムーズに入院調整が図れるようにするためにも、陽性になったときの速やかな登録が重要だと呼びかける。
ただ、どこまで感染者が登録するかは不透明だ。東京都北区保健所の前田秀雄所長は「症状が重い人であれば、食料の配布やホテル療養を希望して登録するかもしれない。しかし、ちょっとした熱であれば陽性になっても『別に登録しなくてもいいかな』と思う人が増えるのでは」とみる。
◆「流行状況の把握」は難しく
登録していない人が自宅療養中に症状が悪化した場合、保健所に連絡したり救急車を呼んだりしても、本当にコロナに感染しているかの確認から始めなければならない。入院先を見つけるのに時間がかかる恐れがある。
全数把握には「感染者の管理」に加え「流行状況の把握」の役割がある。これまでの流行では、若者から感染拡大が始まり、高齢者らそれ以外の世代に広まっていくケースが多かった。
前田所長は「一定程度の人が登録すれば、流行が始まりだしたことはつかめるが、全体の規模や重症度など詳細な動向はつかみきれなくなる」と言う。下水に含まれるウイルス量から流行状況を調べたり、特定の医療機関から詳細な報告を求めたりするなど、さまざまな調査の組み合わせで全体像を把握する工夫を求めた。
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