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Monday, July 12, 2021

キューバのデモ、独裁「終わりの始まり」か - Wall Street Journal

――筆者のジェラルド・F・サイブはWSJエグゼクティブ・ワシントン・エディター

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 今月11日、世界は驚くべき光景を目にした。何千人ものキューバ人がデモのために街頭に繰り出し、さまざまな要求を政府に突き付けた。その中には、62年間続いてきた独裁の終結を求めるものもあった。

 少なくとも15の都市で起きた今回のデモは、島国キューバにとって画期的出来事だという事実に加え、現代における最大の争いの最新例と言える。それは、民主主義と専制主義との争いだ。近年は、専制主義が優位に立っているように思えることが多くなっている。しかし、キューバの混乱は、重要な問いを提示する。その問いとは、専制主義政権が長期的に栄えるのか、それとも自らの崩壊に向けた種をまくことになるのかというものだ。

 デモに参加したキューバ人たちはもっと身近な懸念を抱いているようで、食料難や新型コロナウイルスワクチンの不足などについて抗議していた。しかし、キューバ共産党本部のまさに門前までデモを行おうとしたことは不満がもっと根深いことを示している。

 中国の中央政府による圧政に抵抗した香港市民の場合と同様、キューバ人のデモが反専制主義の新たな潮流の始まりを示すのか、それとも、民主主義を支持する人にとっては逆境と言える状況下でのほんの一例にすぎないのかを見極めるのは難しい。

 現時点では確かに、専制主義政権が有利な状況にあるように見える。自由と民主主義の拡大を目指す超党派の組織「フリーダムハウス」の報告によれば、世界全体での自由の度合いは15年連続で低下し、昨年にはその傾向が加速した。フリーダムハウスは「民主主義の長期的な後退は深刻化している」と指摘する。

 昨年は、とりわけ中欧や中央アジアの一帯など、計18カ国で民主主義的傾向が後退した。これらの地域で改善が見られた国は6カ国にとどまった。

キューバで、食料・医薬品不足に抗議し、独裁政治の終結を求める異例のデモが行われ、何千人もの市民が参加した(英語音声、英語字幕あり) Photo: Stringer/Reuters

 こうした傾向と独裁者による権力保持は、米国とバイデン政権に最大の困難をもたらしている世界的指導者の間で顕著となっている。イランでは、アリ・ハメネイ師が32年にわたって同国最高指導者の地位にとどまっており、在任期間はイランの革命的指導者ルーホッラー・ホメイニ師の3倍に達している。今年は選挙を陰で操り、自分が選んだ候補を大統領に据えた。この大統領はハメネイ師の死後、次の最高指導者になる可能性が高いとされている。

 ロシアでは、ウラジーミル・プーチン氏が大統領や首相として22年間権力を維持している。その期間は、不動と思われていたレオニード・ブレジネフがソ連を支配していた期間より長い。プーチン氏は在任期間で29年の記録を持つヨシフ・スターリンに近づきつつある。プーチン氏がさらに10年以上にわたって権力を維持できるようロシアの法律を再調整したことを考えると、スターリンを超える上で好位置に付けていると言える。

 中国では、習近平国家主席が権力を維持している期間はまだ9年だが、彼は個人崇拝を推進し、任期制限の撤廃を実現した。それにより、同氏は生涯にわたって支配者でいることが可能になった。また、トルコのレジェプ・タイップ・エルドアン大統領とベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領の、自らの権力に対する一切の脅威をつぶすことへの決意は、習氏に劣らないようだ。

 このため、今は独裁者の栄華の時期のように見える。しかし、キューバやベネズエラ、イラン、香港で沸き立っている不満や、プーチン氏が敵対勢力に毒を盛って投獄しなければならない状況に置かれていることは、独裁者の支配がどれほど長く継続し得るのかとの疑問を生じさせる。深く根付いた独裁政治が、自らの最終的な失脚のための状況をつくりだしている可能性はないのだろうか。

 民主主義は厄介なものである。しかし独裁主義の問題点は、そうした厄介さが欠如していることだ。個人崇拝が進み、良いアイデアかもしれない反対意見が押しつぶされ、健全な討論や革新的な考え方が阻止される。中国問題の専門家、ジュード・ブランシェット氏は「フォーリン・アフェアーズ」誌に掲載された最新の記事で、中国における習氏のこうしたリスクを指摘している。それによると、「『習近平思想』の偉大さに対する賛辞は、部外者にとってはただ単に奇妙に見えるか、もしくは滑稽でさえある。しかし、政策決定の質や(共産)党内での情報の流れに真に有害な影響をもたらしている」という。

 少なくとも中国は経済運営においてはうまくやっている。それ以外の国々では、独裁主義は国家資源の略奪、腐敗、全般的にずさんな経済管理を生んできた。

 フリーダムハウスのマイケル・アブラモウィッツ代表は、「長期的に見れば、独裁者は代償を支払うことになるだろう」と指摘する。その上で「問題はこの長期的な期間が、極めて長くなり得ることだ」と述べた。

 アブラモウィッツ氏によれば、現代の独裁者たちは政治的により抜け目がなく、市民的自由の要求を抑えるために必要とあれば物質的な要求にも応じる。そして、独裁者は言うまでもなく、情報面でより閉鎖的な環境下で活動することができる。

 確かに、独裁者は自らの終焉(しゅうえん)に向けた土台づくりを行っているのかもしれない。だが同時に、独裁者であり続けるための能力を高めている可能性もある。一方、民主主義にとって最善の攻撃――とりわけ自由世界のリーダーである米国において――は、それが独裁主義よりも優れたものであることがもっと目に見えて分かるよう、民主主義をうまく機能させることである。

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