「水上のグレートマザー」日高逸子物語(2)
「ヒダカ、頑張れ!」 「よく戻ってきた。待ってたぞ!」 最低ランクからの再起に懸けるボートレースの女王、日高逸子(59)=福岡市=が姿を現すと、ファンからの声援が飛んだ。 【写真】復帰戦で豪快なターンを決める日高逸子 2021年2月17日、四国・徳島の鳴門ボートレース場。日高は女子一般戦「ヴィーナスシリーズ」に登場した。最高ランクのA1から最低のB2に陥落して以来、実に162日ぶりのレースだった。
1985年にデビューし、男子と互角以上の戦いで通算2千勝、通算優勝75回、女子賞金王など数々の金字塔を打ち立ててきた。ところが2020年9月5日、福岡で開催されたレースの最終戦が、地獄の始まりだった。 日高は既に2度のフライングを犯していた。フライングすれば舟券は全額返還される。ファンは期待を裏切られ、主催者の収入は減る。選手はその責任を負い、出場停止処分を受ける。1回目は30日間、2回目は60日間、3回目は90日間。その間は無収入となり、3回目ともなると降格処分が下される可能性が高い。 この最終戦を無事故で完走しさえすれば、A1を維持できるはずだった。並の選手なら「安全策」を選ぶだろう。しかし、日高は違った。 「守りの戦いはしたくなかった。ファンの期待に応えるのに必死だった」 結果はフライング。それも、わずか100分の1秒。まばたきする間もない違反だった。
■ ■ 出場停止中は練習もままならない。各会場では日々レースが開催されているため、ボートに乗る機会が制限されるからだ。日高が復帰戦までに練習できたのは、わずか3日だった。 「体に染みついていた感覚が薄れていくのが怖かった。レースの夢を何度も見て、夜中に跳び起きた」 不安を拭うには、今できることをやるしかない。朝から夕方までジムとヨガスタジオに通って、体を鍛え抜く日々が続いた。
ただ、全国を飛び回って休みのなかったA1時代とは違う経験もした。小学校に招かれての講演、そして家族との時間。日高を支えてきたマネジャーで主夫の邦博(59)と娘2人と初めて一緒に正月を迎えた。 「講演で子どもたちのキラキラ光る瞳を見て勇気をもらった。家族とのゆっくりした時間もエネルギーになった。レースで今までにない自分を見せられるかもしれない」
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