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Sunday, February 28, 2021

米貯蓄率の高さ、支えるのは富裕層のみにあらず - Wall Street Journal

――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」

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 集団として見た場合、米国人は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の間に驚異的な額を貯蓄している。その貯金の多くは富裕層の銀行口座にある。だが、極めて重要なことは、それがすべてではないということだ。

米商務省が26日に発表した1月の個人所得(季節調整済み)は、コロナ対策の追加現金給付に支えられ、前月比で10%増加した。支出も前月比2.4%増と大きく増えたが、所得の伸びにはまったく釣り合っていない。このため、個人貯蓄率(税引き後所得に占める貯蓄額の割合)は13.4%から20.5%に増加し、5月以来の高水準となった。パンデミック以前で貯蓄率がこれより高かったのは、第二次世界大戦中だけだ。

 貯蓄率上昇をもたらしたのは政府による現金給付だけではない。コロナ危機の中で起きているサービス支出の弱さにも起因するものだ。人々は長期休暇や外食などをしなくなっている。26日に発表された報告書によると、消費者支出全体の約3分の2を占めるサービス支出は、前年比5.3%減となった。

 パンデミックが始まって以降、貯蓄率は高止まりし、家計のバランスシート上の現金は大きく積み上がっている。米連邦準備制度理事会(FRB)が公表した統計によれば、2020年第3四半期末の時点で、米国の家計が保有する現金および現金同等物の額は、2019年末よりも2兆2000億ドル(約234兆4000億円)増加した。現在は間違いなくそれよりも多くなっており、政府が追加救済策の実施を目指していることで、この額はさらに多くなる可能性がある。パンデミックが収束すれば、使われるお金は潤沢にある。

 問題は、絶対額で貯蓄を最も増やしているのが富裕層世帯だということだ。彼らはコロナ危機の間も仕事の維持に苦労せず、使わなかった自由裁量支出の額も最も多かった。そのため、パンデミックが収束したとき、富裕層にサービスを提供する企業が有利になるという主張が成り立つ。

コロナ禍が収束すれば、富裕層以外の米国人も多くが支出を増やす可能性がある

Photo: Mark Moran/Associated Press

 だが、富裕層以外でも貯蓄が増加しているようだ。180万世帯を対象にJPモルガン・チェース研究所のエコノミストが実施した当座預金口座の分析によると、10月末時点の残高中央値は前年比約40%増加した。また、所得分布で下位25%の家計の残高中央値は約45%増加した。この数値は11月と12月には下がっている可能性があるが、恐らく追加現金給付措置で増えているだろう。

 特にサービス業従事者を中心に、多くの人が依然として経済的に苦しい状況に陥っているが、危機が緩和すれば、米国の低所得者層の多くは支出を大幅に増やす可能性がある。低所得層の未充足ニーズは多いとみられ、消費性向は他の層よりも大幅に高い。雇用市場が再度悪化する懸念が少なくなれば、経済面の不安感も軽減されるだろう。

 過去1年間に米国の低所得者層が受けた損害は甚大だったが、パンデミックが収束し始めた際に他の層よりも安心感が小さいということはないだろう。

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