2月13日9時。東京都立川市「SORANO HOTEL」において、第70期王将戦七番勝負第4局▲永瀬拓矢王座(28)-△渡辺明王将(36)戦が始まりました。棋譜は公式ページをご覧ください。
第3局は渡辺王将の勝ちでした。
七番勝負はここまで、渡辺王将が3連勝。もし本局で渡辺王将が勝てば4連勝ストレートでの防衛となります。
一方、3連敗でカド番に追い込まれた永瀬王座は、残りを4連勝するしかありません。3連敗後の4連勝は、将棋界では過去にわずか2回。王将戦ではまだ1回もありません。
渡辺王将の今年度成績は20勝12敗(勝率0.625)です。
渡辺王将は王将戦第3局に勝って公式戦7連勝。しかし直後の棋王戦第1局では糸谷八段に敗れ、連勝が止まっています。
また渡辺王将は朝日杯準決勝で藤井聡太二冠と対戦。こちらもまた注目の大一番でした。対局前、渡辺王将は以下のように語っていました。
渡辺「藤井さんとはタイトル戦、昨年やられてますし朝日杯では一昨年ですかね、決勝戦で負けているので。今回はそういった借りをまとめて返せるように(笑)。はい、ちょっとがんばっていきたいなと思います。実質的に1回も勝ってないですからね。番勝負で無駄星で一発入れただけなんでね(笑)。こういうトーナメント戦みたいなところでね、勝ってないんで。今回は借りをまとめて返せるようにしたいと思います」
しかし結果は手痛い逆転負けでした。
渡辺王将と藤井二冠の対戦成績はこれで渡辺1勝、藤井5勝となりました。
しかし落ち込んでいる暇はありません。渡辺王将の視線はすぐに前を向いていたようです。
渡辺王将と永瀬挑戦者の対戦成績は、渡辺14勝、永瀬3勝。意外な大差がついています。
しかも朝日杯準決勝前に語られた渡辺理論でいけば、永瀬挑戦者の3勝は「番勝負で無駄星」、実質渡辺全勝ということにもなります。
もちろん、永瀬挑戦者が弱いわけではありません。豊島竜王、藤井二冠などに勝ち、激熱の王将戦リーグを勝ち上がってきたのが何よりの証拠です。
永瀬王座の今年度成績は38勝22敗2持将棋(勝率0.633)。
全棋士中のランキングで、対局数62は独走の1位。勝数38は2位です。
本局で立会人を務めるのは谷川浩司九段です。王将位は4期。17世名人資格保持者であり、タイトル通算獲得数は27。言うまでもなく、将棋史上に燦然と名を刻む名棋士です。
もし渡辺王将が本局に勝てば王将位防衛で通算5期となり、谷川九段を抜きます。またタイトル通算27期は谷川九段に並ぶ数字です。
朝9時。
「定刻になりました。第70期王将戦第4局、永瀬王座の先手でお願いします」
谷川九段の合図で、両対局者は一礼しました。
永瀬挑戦者は初手は2筋、飛車先の歩を伸ばしました。
対して渡辺王将も8筋、こちらも飛車の上の歩を前に進めていきます。
戦型は両者の対局でよく現れる角換わりになるかと思われたところ、9手目、永瀬挑戦者は角筋を止めてそれを拒否しました。早くも変化球といったところです。渡辺王将はしばらく手を止めて、盤上を見つめていました。
進んで、永瀬挑戦者は金銀3枚の矢倉囲いに組みます。対して渡辺王将は雁木の構えです。
永瀬挑戦者は角を使って3筋で歩を交換します。対して渡辺挑戦者は6筋、8筋、7筋とテンポよく歩を突っかけ、積極的に動いていきます。
11時半を過ぎた現在、永瀬挑戦者は47手目を考慮中。早くも中盤の難しい局面といえそうです。
王将戦七番勝負は持ち時間各8時間。1日目は昼食休憩をはさみ、18時の時点で手番の側が次の手を封じて指しかけとなります。
明日2月14日はバレンタインデー。将棋界では1996年、羽生善治挑戦者が谷川浩司王将を4連勝で降し、七冠同時制覇を達成した日としても知られています。
明日でその七冠フィーバーからちょうど四半世紀、25年が経ちます。当時25歳だった羽生九段は、50歳となった現在も王将戦リーグに在籍。第一線で戦い続けています。
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