(C) LES FILMS DU WORSO ? NOODLES PRODUCTION ? VOLCANO FILMS ? EVO FILMS A.I.E. ? SCOPE PICTURES ? LEFT FIELD VENTURES / DEPOT LEGAL 2015
『エヴォリューション』
そこはユートピアか、ディストピアか。
＜あらすじ＞
少年と女性しかいない、人里離れた島に母親と暮らす10歳の二コラ。その島ではすべての少年が奇妙な医療行為の対象となっている。「なにかがおかしい」と異変に気付き始めた二コラは、夜半に出かける母親の後をつける。そこで母親がほかの女性たちと海辺でする「ある行為」を目撃し、秘密を探ろうとしたのが悪夢の始まりだった。“エヴォリューション（進化）”とは何なのか…？
強い煌めきと淡い光が混在する不快感の正体
私がなぜこの作品が好きかというと、冒頭3分間のシーンを夢でよくみるからです。
透明感のある青い水面がキラキラして、魚が泳いでいて見渡す限り美しい。
初めて観たときから、このシーンがずっと頭に残っていたので夢にも出たのかもしれません。
しかしこの映画に出てくるのは美しい海だけではありません。
大きな波が岩礁に強く打ち寄せて泡がたつ。
81分と短めな尺の中で何度も描かれるこの海のシーンではゾクっとするような命の恐怖を感じさせるカットがいくつもあります。
澄み渡ってキラキラしていてる反面、無数の生命の源であり、不気味な生き物を生み出しそして死んでいく二面性が海の魅力ですよね。
周りを海で囲まれた孤島の少年と女性しかいない閉鎖的な町が舞台となる本作。
少年たち全員に施される不思議な手術のシーンでも似たような二面性が感じられます。
医療行為を受けることの、有識者への安心感と死ぬかもしれないという恐怖のバランスが、なんとも海の存在と似ています。
フレンチホラーらしく静かに気持ち悪いシーンの数々
始めから終わりまで、必要最低限の会話しかなく、終盤はほぼ台詞がないのでは？と思うくらい画面の力と音楽でストーリーが成り立っています。
無音という音を聴かせているシーンもあれば、おとぎ話のような音楽がかかるシーンも。
無駄な台詞も、音も、物も、光もない洗練された画面が魅力的です。
こうした音だけではなく色やモチーフにもこだわりが垣間見えます。
赤がキーカラーとして何度も登場するのですが（ヒトデ、主人公ニコラのスイムパンツ、血、えんぴつ）、本作ではエネルギーや生きる力の象徴として使われているような印象があります。
ニコラの好きなもの、生死を感じる瞬間には常に赤いものが側にあって物語に絡んでいくのです。
モチーフでは星形、五角形が多用されています。
手術台の灯り、女たちの儀式、ヒトデ、ステラという名前も、すべてこのモチーフに関連したものです。
この星形、五芒星ともいわれますがこれも生命に関連する象徴だと言われています。
本作では、こういった生命に関わるようなモチーフを使って人が持つ安心感と恐怖をかたちにしている。
色やモチーフ、音楽が時には感情を逆撫でするようにして配置されているため「なんだか気持ち悪い、変だな」という気持ちが勝手に積もっていくのがなんとも不思議な感覚です。
なんとなくみんなが持っている身体に関する「普通」と、何かが違う違和感から始まる物語。
びっくり驚く系は苦手だけど、不穏な空気感がほしい…そんな時はこの作品がオススメです。
エヴォリューション
公開年：2015年
【Editor】septmersfilms
三度の飯よりホラー好き。ホラーがないと夏が始まらないと思っている。たまにおしゃれ映画・アニメーションも嗜むが、基本的にゾンビ映画をみることで心を癒している。Twitterでは映画以外にも本業のマーケティング関連記事もつぶやきます！ ぜひチェックしてください！
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