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Friday, August 14, 2020

進まぬ戦跡保存 価値判断難しく、調査実施7県のみ - 日本経済新聞

軍用機の格納に使われた「八日市旧飛行場掩体壕」(滋賀県東近江市)=滋賀県提供

軍用機の格納に使われた「八日市旧飛行場掩体壕」(滋賀県東近江市)=滋賀県提供

戦時中の状況を今に伝え、「無言の語り部」ともいわれる戦争遺跡の保存が進んでいない。日本経済新聞の調査では、文化財として保存するため戦跡を調査したのは47都道府県中7県にとどまる。歴史的な評価の難しさなどから自治体が対応を決めかねているうちに、老朽化による取り壊しも相次ぐ。専門家は柔軟な保存を呼び掛けている。

戦時中に旧日本軍が使用した施設や戦災跡などの戦跡を巡っては、文化庁が1996~98年度、各都道府県を通じて所在調査を行い、約500カ所をリストアップした。うち50カ所については2003年度から、同庁による詳細な調査も行われた。

ただ同庁は「地元で重要性を判断して調査・保存に取り組んでほしい」(文化財第2課)との立場で、調査結果の報告書も作成されなかった。結果的に、全国を網羅するような戦跡の現状把握はできていないのが実情だ。

日本経済新聞は47都道府県を対象に、都道府県独自で戦跡の文化財としての保存に向けた調査を行ったかを調べた。その結果、実施済みは宮城、栃木、神奈川、高知、福岡、宮崎、沖縄の7県、実施中は長野、和歌山の2県だった。秋田県は「検討中」としている。

残る37都道府県はこれまでに独自の調査を行っておらず、今後の予定もなかった。ネックになっているのが、戦跡の評価の難しさだ。

解体前の「北部軍司令部防空指揮所」(札幌市)=同市提供

解体前の「北部軍司令部防空指揮所」(札幌市)=同市提供

北海道では文化庁の所在調査の際に5カ所以上の戦跡を報告したが、その後、道独自で調査は行っていない。「北の大本営」と呼ばれた旧陸軍の「北部軍司令部防空指揮所」(札幌市)の建物は、国家公務員宿舎の建設に伴い、2008年に解体された。

道文化財・博物館課の担当者は「文化財として保存できていれば、解体されなかった可能性もある」としつつ、「古代や明治期などの遺跡に比べ、評価が定まっていない戦跡は保存の議論が進みにくい」と話す。

滋賀県は東近江市からの打診を受けて、戦時中に軍用機を格納するために使われた「八日市旧飛行場掩体壕(えんたいごう)」を保存の対象とした一方、県内全域での戦跡の調査には着手できていない。文化財保護課の担当者は「何を戦跡として保存すべきか、住民や市町村と共通認識を持てずにいる。県が率先して動くことは難しい」と明かす。

山梨県の文化振興・文化財課の担当者は「戦跡は負の遺産というイメージが強く、文化財として保護することに抵抗がある市町村も多い」と打ち明ける。

調査を終えた7県も、うち5県では文化財の指定・登録にはつながっていなかった。

戦跡の保存に詳しい安藤広道慶応大教授(考古学)は「国や自治体による文化財の指定・登録は、専門家の統一見解に基づいて行うのが一般的で、一般市民も含めて多様な意見や見方がある戦跡については及び腰だった」と指摘する。

その上で「戦跡の保存に必ずしも統一的な歴史的評価は必要ないのではないか。様々な立場の人が戦争と向き合い、対話する場として、柔軟に保存していくことが望ましい」と話している。

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August 14, 2020 at 01:10AM
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