インド・ビハール州に暮らすダスラート・マンジさんは、カースト制度の最下層に属する貧しい労働者だ。そんなマンジさんが、22年間かけてのみとハンマーで岩山を削り続け、偉業を達成した。 岩山を開削という途方も無い苦役に挑んだのは、大切な人を失ったからだった。
崖から転落死、大怪我を負った妻を救えなかった
インドの山間部にある村でマンジさんは、愛する妻とともに暮らしていた。1959年のある日、マンジさんの妻は、険しい峠で足を滑らせて崖から転落し、大怪我を負ってしまった。妻を助けるには救急医療が必要だ。 しかし、村から最寄りの町に行くには、急峻な岩山を避けて大きく迂回し、険しい山道を55キロもの距離を移動しなければならない。徒歩で間に合うわけもなく、マンジさんの妻は命を落としてしまった。 村と町を隔てるこの岩山がなければ、妻は救われたかもしれないと思ったマンジさんは、他の村人に二度と同じ目に遭わないよう、のみとハンマーを手に岩山を削り始めた。村人に狂っていると嘲笑われても、マンジさんの決意は揺るぐことはなかった。 そして、22年後の1982年、マンジさんはたった1人で村から町までの道を開通させた。55キロの道のりが、15キロに短縮された。26歳でこの偉業にチャレンジしたマンジさんは48歳になっていた。まさに壮年期のすべてを費やしてのひたむきな行為だった。 マンジさんは2007年に73歳で肝臓がんために亡くなったが、その後も彼の偉業は語り継がれ、2015年にインドの人気俳優ナワーズッディーン・シッディーキー主演で実写映画化された。映画のタイトルは「マンジ―山の男」。試写会には成長したマンジさんの遺族が招かれたという。
SNSで「青の洞門」を想起する人も
あるTwitterユーザーが6月20日、マンジさんのこのエピソードを紹介したところ、またたく間に拡散され、9000件以上のリツイートを記録し、大きな話題となった。「自分を信じて信念を貫く人はかっこいい」「人の命を助ける英雄はあんまり居ない」などの声が寄せられ、禅海和尚が手掘りで作った大分県のトンネル「青の洞門」を想い起こした人も。 妻を失った悲しみが、マンジさんの異常とも言われる行動へと駆り立てた。それだけ深く妻を愛していたのだろう。
江守順二
"のみ" - Google ニュース
June 29, 2020 at 07:03PM
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最愛の妻を思い、22年間のみとハンマーで岩山を削り続け、新たな道を切り開いたインド人男性がSNS上で話題に(FINDERS) - Yahoo!ニュース
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