約50年もの間、マーケットに携わる平野憲一氏。オイルショック、平成バブル崩壊、リーマン・ショック……数多くの金融危機を、自らの目で見てきた。しかしコロナ・ショックはその中でも異質だという。何が今回は違うのか。この危機を乗り越えるにはどうすればいいのか。話を聞いた。
──相場を長年見てきた平野憲一さんの目に、今回のコロナ・ショックはどのように映っていますか。

今回については、過去の金融ショックと性質が異なるものだと感じます。何が今までと違うかというと、経済の根本であるヒトとモノの移動が制限されていること。
そのため今回は、金融ショックと同時進行で産業の衰退が起こっている。これが大きいと思います。
国境が封鎖されるなど、戦争時でなければ起こり得ない。コロナウイルスは、そんな異常事態を世界中で実現させてしまいました。
──確かに、リーマン・ショックなどの過去の金融ショックとは大きく異なる点ですね。
平成のバブル崩壊にしても、金融政策の失敗がまず先でした。株価が下がる一方で金利を上げ続けたことがいけなかった。今となっては「何てことをしたんだ」と思いますが、当時は地価の上昇を抑えることが重要視されていたのです。
リーマン・ショックも同様、金融システムの崩壊が先ですよね。産業が衰退するのはその後でした。
──過去の金融ショックとの違いから投資家たちが混乱していると。
ええ。投資家たちの間にはえたいが知れない不安が広がっており、結果として株式は例を見ないような値動きを見せています。その異常性は、もちろんAI(人工知能)による極端な取引の影響もあるでしょう。
今回のショックでは、金融緩和や財政出動といった"アクセル"と同時に、ヒトやモノの移動制限という"ブレーキ"を踏まなければならない。非常にアンバランスな状態です。
──その"アクセル"である日銀や政府の対応についてはどうお考えですか。
日銀はやることをやってくれたと思っています。あとは政策です。リーマン・ショック時に首相だった麻生太郎氏が現副総理だということには期待したいものですが。
■コロナ収束後は一気に上昇か
──今後のマーケットの見通しは。
コロナ・ショックが起きる前は市場には資金が余っている状態だった。世界的にあれだけ金利が低い状況であったにもかかわらず、資金が国債にまで流れていたぐらいですから。
今後の株価は、2020年後半の企業業績次第ではあるけれども、これだけ金融緩和がなされている状態であれば、回復すれば一気に上昇するとみています。ウォーレン・バフェット氏が率いる米投資会社バークシャー・ハザウェイなどは、今まで冷静に現金保有比率を上げてきた。そうした長期運用ファンドたちは、今こそ買いを入れてくるでしょう。そう考えると、需給の面では悪くないと思っています。
──日本株の回復はいつ頃を見込んでいますか。
国内の新規感染者数が減少した頃が一つのめどとなるでしょう。現在の日本の株価については、既に4~9月期の業績まで織り込んでいると思われます。不思議なのですが、米国株より日本株の方が先の期間を織り込む傾向にある。
感染拡大が収まれば、ヒトやモノの移動制限という"ブレーキ"はなくなります。一方で、金融緩和という"アクセル"を目いっぱい踏んでいる状態。日経平均株価は20年3月底値からプラス約1万円、2万6000円台へ一気に回復することもあり得ます。

■耐久力を持つべし
──下落局面でも生き残れる投資家の共通点はありますか。
証券会社に入社してすぐのオイルショックから始まり約50年間、実に多くのショックを見てきました。その経験から1つ言えるのは、耐久力のある投資家が生き残ってきたということ。
耐久力とは、「信用取引などの投機を一切やめて、現物株取引のみで向かえる余裕がある」ということです。目先の株価の上下は気にせず、ひたすら持ち続ける。そして余裕があれば下値で資金を追加する。そうした投資家たちが、次の上昇相場で持ち返しサバイブしてきた。
現在、私としても非常に心苦しい局面です。けれども、何かショックが起きるとその後の経済には必ずいい影響がある。この山を越えたら次の発展が待っている。約50年のマーケット経験から、そう信じています。

(大松佳代)
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April 15, 2020 at 10:00AM
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兜町の重鎮が語る「コロナ危機は現物株のみで耐え抜く」 - 日本経済新聞
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